現在では、地震対策として軽い屋根材が普及しています。
主に、スレート屋根やガルバリウム鋼板や自然石粒付鋼板などの洋風デザインの「軽量屋根材」です。
ちなみに、この軽量屋根材は、粘土瓦の約「2~3割」の重さで、地震対策としては、それなりに効果を発揮しています。
しかし、昔ながらの粘土瓦(和瓦)に思い入れがあり、洋風デザインの屋根に抵抗がある方も多いです。
そこで、デザインが粘土瓦で軽量化に成功した「軽量瓦」が注目を集めています。
今回は、この「軽量瓦」の特徴や注意点をまとめてみたいと思います。
軽量瓦とは?
スレート瓦も軽量瓦の1つと言ってよいのですが、根強い瓦屋根へのこだわりがあるため、KEMW株式会社が開発したのが軽量瓦です。
粘り気のある合成樹脂をセメントと混ぜて発泡処理して軽量化させた瓦で、「樹脂混入繊維補強セメント瓦」が正式名です。
なおKMEW(ケイミュー)社はクボタと松下電工が2006年に事業を合併して設立させた企業で、スレート瓦の寡占企業です。
ある意味軽量瓦は、スレート瓦を元として合成樹脂によりボリュームを持たせて瓦の形にしたものと言えると思います。
メリット
軽量にした瓦ですので、特殊な技術は必要なく、逆に軽量になった分作業の効率化が図れる瓦です。
重さは粘土瓦屋根の約半分です。
もちろん軽いだけではなく、合成樹脂を混ぜてあるため割れにくい特長があります。
また、粘土瓦と違って屋根にビスで固定を行っているため、台風などの強風下でも飛散しにくい構造になっており、同時に雨漏りもしにくい雨仕舞です。
デザイン的にも日本瓦から西洋瓦までいろいろなバリエーションがあり、あらゆる建築にマッチさせることができます。
デメリット
粘土瓦の約半分の重さといえど、他の軽量屋根材と比べるとそこそこ重たいです。
費用は、かなり高めの価格設定となります。
下地にかなりの役物を使用しますし、それぞれ「棟」や「ケラバ」なども専用のものを用意する必要があるためです。
表面は塗装によるコーティングで色あせしますので、状況によって「25年以上」経過したら塗装を検討する必要があります。
そのほか、流通がまだ少ないため、施工事例も少ない屋根材となります。
軽量瓦が劣化するとどうなる?
一般的には軽量瓦の耐用年数は30年と言われています。
新しい素材ですので、30年の耐用年数を過ぎた事例がまだないため、実態でデータがありません。
可能性としての話となりますが、元より基本がコンクリート瓦ですので表面のコーティングが経年劣化し、色が剥がれたり、くすんだりする可能性があります。
またコケなどで汚れやすくなる可能性もあります。その点が従来の本瓦との違いと言えるかもしれません。
軽量瓦のメンテナンス方法
定期的なメンテナンスは、ほとんど必要はありません。
粘土瓦と違って、漆喰や銅線などもありませんので、細かい補修もいりません。
ただ、30年ほどを過ぎると表面加工の劣化が起こる可能性があります。
その場合にはメンテナンスが必要となるでしょう。その際は一般のスレート瓦と同じように再塗装を行うことになると思われます。
まとめ
阪神淡路大震災のときには昔ながらの重い瓦屋根の倒壊が相次ぎ、多くの被害が出ました。
それから四半世紀経ったとは言えその経験はまだ生々しく残っていますし、各地で大地震のニュースがある度に軽量瓦への関心は増すばかりです。
現在ではKMEW社だけではなく他のメーカーも製造しており、種類も色もさまざま揃っています。
瓦屋根のデザインに思入れがある方は、この「軽量瓦」をご検討してみてください。