瓦屋根

 

住宅の屋根の多くは頂点から先端に向かって角度がついています。この角度を勾配といいますが、実は住宅によって勾配の角度は様々だということをご存知でしょうか。

ではなぜ屋根勾配は固定されておらず、住宅によってそれぞれなのでしょう。

ここでは屋根勾配がもたらす影響や、メリット・デメリットなどについて解説していきます。

屋根勾配とは

屋根と勾配

 

屋根勾配とは、屋根の角度を指しています。

屋根の勾配は「○寸(すん)勾配」というように「」という単位で表されます「10寸(3030mm)の距離に対し、○寸の高さ」があるかで計測を行います。

仮に「10寸の距離に対し、4寸の高さ」がある場合、その屋根は「4寸勾配の屋根」というようになります。その為、5、6、7寸と高さの数値が大きくなるにつれて屋根の勾配が急になっていきます。

 

屋根勾配の決まり方とは

 

屋根勾配は住宅によりそれぞれ異なります。

ではなぜ勾配はそれぞれ異なるのでしょうか。また、どのようにして勾配は決まるのでしょうか。

いくつか理由などを紹介していきます。

 

使用する屋根材により決める

屋根仕上がり

 

屋根勾配を決める際、使用する屋根材により制限が掛かるというケースがあります。

屋根材別の必要勾配数

瓦屋根の場合4寸勾配以上

スレート(コロニアル)の場合3寸勾配以上

金属屋根(縦葺き)の場合1寸勾配以上

金属屋根(横葺き)の場合2寸~2.5寸勾配以上

上記のように、使用する屋根材によって○寸勾配以上を確保しないといけないというルールがあります。

その為、新築の際には「使用する屋根材により勾配を確定」させたり、リフォームの場合は「勾配に併せて使用する屋根材を選ぶ」というようになります。

 

敷地制限により決める

躯体

 

屋根の勾配を決める際、敷地制限より決めることがあります。

屋根は勾配が緩ければ緩いほど、棟(頂点)から軒先(先端)までの距離が長くなってしまいます。その為、勾配が緩いことで屋根が広くなり、軒先が空中越境してしまうことがあります。

そういった敷地制限により、勾配を急にせざるを得ないというケースもあります。

特に住宅が密集した住宅地などでは起こりやすい事例です。

 

地域により決める

雪止め金具

 

屋根の勾配を決めるのに、住宅を建てる地域が影響することがあります。

それは積雪量の多い寒冷地です。寒冷地では6寸勾配やそれ以上といった急勾配の住宅が多くなります。

それは積雪の重みにより住宅が押し潰されるというのを避ける為です。

急勾配にすることで、雪が流れ落ちやすくなり、住宅の負担を減らすことができます。

 

デザインにより決まる

腰折れ屋根(ギャンブレル屋根)

 

屋根は勾配だけでなく様々な形状があります。

片流れ屋根だと勾配がキツくなりますし、寄棟だと勾配がゆるくなります。

また勾配がキツいことでスタイリッシュな印象を与えたり、勾配が緩いことで柔らかい印象を与えるという効果もあります。

屋根形状の種類について詳しくはこちら>>

 

屋根勾配が与えるメリットやデメリット

 

ここからは、屋根勾配が住宅に対してどのような影響を与えているのかを紹介していきます

その屋根勾配ですが、じつは勾配数によって大きく3つに分類されています。

急勾配(6寸勾配以上)
並勾配(3~5寸勾配)
緩勾配(3寸勾配以下)

 

それぞれメリットやデメリットがありますので、「急勾配」、「緩勾配」、「並勾配」の順に解説します。

 

急勾配

屋根足場

 

メリット

水捌けが良い

 

急勾配だと雨や雪が屋根面を滑り落ちやすくなる為、必然的に屋根に水が残ることが少なくなります。

その為、雨漏れがし辛くなるというメリットがあります。

 

狭い敷地に対応ができる

 

急勾配の場合、屋根の幅を小さく納めることができます。

その為、隣家が近い住宅地などでも、敷地面積いっぱいの住宅を建てることができます

汚れが付きづらい

 

急勾配だと土やほこりなどの汚れも付着しづらくなり、美観性が保ちやすいというメリットがあります。

雨水の吸収も少なくなるため、コケや藻も発生しずらくなります。

 

屋根裏の空間が確保できる

 

急勾配だと最上階の天井から軒先までの空間が広くなり、屋根裏の空間が確保できます。

屋根裏の空間が確保できることで、ロフトや屋根裏部屋といった設計が可能になったり、空間が確保できることで断熱性能が高まるというメリットがあります。

 

デメリット

耐風性が弱い

 

急勾配だと必然的に屋根面積が広くなってしまいます。

その為、台風などの強風の煽りを受けやすく、屋根材が飛ばされてしまいやすくなるというデメリットがあります。

 

メンテナンスの費用が割高になる

 

塗装や葺き替えを行う際には施工面積が広くなり、メンテナンス費用が高くなってしまいます。

また急勾配の場合、作業員が屋根の上を歩くことができず、「屋根足場を組む必要」があります。

その分足場代も高額になる為、メンテナンス費用が割高になってしまいます。

 

緩勾配

折板屋根

 

メリット

メンテナンスの費用が割安になる

 

緩勾配は屋根の面積が最小限で抑えることができます。

その為、塗装や葺き替えなどの際も施工面積が少なくて済むだけでなく、建物の高さも低くなる為、足場価格も抑えられます。

メンテンナンスを行う際の費用を抑えられる点が最大のメリットです。

 

耐風性が高い

 

緩勾配の場合、急勾配と反対に屋根面が風を受ける面積が低くなります。

その為、屋根材が飛ばされたりしてしまうといった可能性が低くなります

 

デメリット

水捌けが悪い

 

緩勾配の場合、雨が屋根面から流れ落ちるのに時間がかかってしまいます。

その為、屋根面に水が滞在する時間が長くなり、結果的に雨漏れが発生する確率が高くなってしまいます

 

汚れがつきやすい

 

雨と同様で汚れも屋根面に滞在してしまう為、美観性を損いやすくなります

 

断熱性が低い

 

最上階の天井から屋根面までの空間が確保できない為、屋根面に受けた熱気や冷気の影響を受けやすくなります。

また、雨や雷などの騒音も響きやすく、遮音性が低いというデメリットもあります。

 

並勾配

塗装された屋根

 

メリット

様々な屋根材に対応している

 

金属屋根から瓦屋根といったあらゆる屋根材に対応している勾配の為、使用する屋根材を選びません

 

耐久性が高い

 

急勾配、緩勾配の中間ということもあり、耐水性や耐風性に良いバランスで対応しています。

 

デメリット

とくになし

 

並勾配には特筆するようなデメリットはありません。その為、制限が無い場合はもっとも多く使用される勾配です。

あえて挙げるとすると、急勾配、緩勾配のメリットに比べて、若干劣るという点です。

 

まとめ

 

普段はあまり気にすることのない屋根勾配ですが、実はその裏側には様々な事情があり、それぞれメリットやデメリットが発生します。

これから新築を建てたい方や、メンテナンスを行いたい方は、自宅の屋根勾配についてもチェックしてみてはいかがでしょうか。