屋根工事を行う際には、屋根材の下地として「構造用合板(こうぞうようごうはん)」を使用することが一般的です。
ですが、構造用合板とはどのような建材で、よく聞く「ベニヤ」や「コンパネ」との違いも良くわからない方も多いと思います。
ここでは、ベニヤやコンパネと構造用合板の違いや、野地板との関連性についても解説していきます。
そもそも構造用合板とは?
構造用合板とはその名の通り、建物の構造体として使用される合板です。
使用場所により異なりますが、「9mm、12mm、15mm、24mm、28mm」とさまざまな厚みがあります。また使用されるのは屋根だけでなく、壁や床下地としても使用されます。
合板とは奇数枚の木材を貼り合わせて作られる板です。
木目繊維方向を垂直に交わるように積層させることで強度を出すことができます。また、木材特有のソリやネジレに対しても強いという特徴があります。
構造用合板は強度が高い合板な為、「屋根下地」や、「耐震補強下地」といった負荷が掛かる部分に使用されることが多いです。
最近では、ホームセンターでも販売されており気軽に購入することができます。
ベニヤと何が違うの?
ベニアという建材はご存知の方も多いのではないでしょうか。
ベニアといえば木材というイメージを思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、ベニアとは正式に言うと「木をスライスした薄い板」を指します。
このベニアを木繊維方向が垂直に交わるように積層し貼り合わせた物を「ベニア合板」と呼びます。
「3mm~30mm」とさまざまな厚みで対応することができます。
さまざまな厚みがあることから「床下地、壁下地、天井下地以外に、軒天やバルコニー下地」などで使用されることもあります。
また、表面に化粧板を貼り合わせた「化粧ベニア」といった商品もあります。
コンパネと何が違うの?
コンパネとは「コンクリートパネル」の略称です。
名前だけではコンクリート製と感じてしまいますが、素材は木製です。
コンクリート型枠として使用されていることから「コンクリートパネル=コンパネ」と呼ばれるようになりました。
型枠用ということもあり防水性が高く、屋根下地となる野地板として使用されることもあった建材です。
一方、仕上げ材として使用されることがないため、表面はザラザラとしており、表面の仕上げ材としては不向きだという特徴もあります。厚みは「12mm」です。
構造用合板の種類とは?
構造用合板は種類を分けることができます。
・接合部分の耐久性
・樹種
・ホルムアルデヒドの放出量
上記の三つとなります。それぞれ詳しく見ていきます。
接合部分の耐久性
構造用合板の種類を分ける際に使われる項目の一つ目が「接合部分の耐久性」です。
これは、ベニヤを接合する際に接着剤の耐久性です。
この項目では、特類、1類、2類、3類の4種類に分類されます。
①特類(フェノール樹脂系接着剤)
「特類」の合板には「フェノール樹脂系接着剤」が使われています。
合板の4種類の分類の中で最も耐水性が高く、屋根材のように常に水分の影響を受ける環境において使用されることが多いです。
なお、「建築基準法」に関する告示においては、屋外に面する壁または常時湿潤の状態となる恐れのある壁の場合には、使用する構造用合板は特類に限るとされているほど、その品質・耐久性に信頼があるとされています。
1類(メラミン樹脂接着剤)
「1類」の合板には「メラミン樹脂接着剤」が使われています。
フェノール系接着剤と同様に湿気に強く、防水性に優れているため雨水など水分・湿気の影響を受けやすい箇所の建材として使用されます。
二類(ユリア樹脂接着剤)
「2類」の合板には「ユリア樹脂接着剤」が使われています。
上記2種類の合板よりも湿気に弱いため、屋外や湿気の多い環境においてに使用されることにはあまり適していません。
一般的にベニヤ合板といえばこのタイプのベニヤが使われるケースが多いため、屋根材としてベニヤを使用するにあたっては注意が必要です。
3類(増量ユリア樹脂接着剤)
「3類」の合板には「増量ユリア樹脂接着剤」が使用されています。
「2類」よりも防水性・耐久性が低く、現在はあまり販売されていません。
性能が一番低いため価格もその分安いのですが、常に水分の影響を気にしなければならない屋根材としての使用は不適格だといえます。
・特類・・・1番水分に強く、湿潤状態が常に続いている状態でも使用出来ます。
・1類・・・水分にはある程度の耐久性があり、防水シートを使うことで屋外でも使用出来ます。
・2類・・・耐水性はなく、室内でしか使用しません。
樹種
構造用合板の種類を分ける際に使われる項目の二つ目が「樹種」です。
こちらの項目では、2つの種類に分けられ、「針葉樹」と「広葉樹」に分類されます。
順に説明すると
・針葉樹・・・こちらは比較的お求めやすい価格です。木目が粗く、見た目が悪く主に下地に使用されます。
・広葉樹・・・こちらは値段が高めとなっております。木目がきれいで見た目がいい物が多く。また強度が高いものになります。
ホルムアルデヒドの放出量
構造用合板の種類を分ける際に使われる項目の三つ目が「ホルムアルデヒドの放出量」です。
こちらの項目では、F☆~F☆☆☆☆の4段階に分類されます。☆が多いほど、ホルムアルデヒドの放出量が少なります。
ホルムアルデヒドの放出量が多いと、健康被害であるシックハウス症候群の原因となります。
そのため最近では、「F☆☆☆☆」の構造用合板を使用されることが主となっております。
通称「フォースター」と呼ばれ、ホルムアルデヒド飛散量の少なさは最高ランクです。
野地板の種類【構造用合板・バラ板・耐火野地板】
ここまで「構造用合板」について詳しく解説してきました。ここからは、屋根の部分で最も「構造用合板」が使用される野地板(のじいた)についてご紹介していきます。
野地板とは一言でいうと、屋根の下地板です。野地板は垂木(たるき)と呼ぶ屋根の骨組みの上に設置し、屋根の土台を形成します。
この野地板には、構造用合板以外にもいくつかの種類があります。長期的に建物を保護するうえでも重要な要素となるため、下地材の種類や品質を正しく理解しなければなりません。
そこでここからは、一般的に使用される構造用合板の特徴を解説するとともに、屋根下地材の種類をわかりやすく紹介します。
構造用合板
近年の戸建て住宅で幅広く採用されている野地板が「構造用合板」です。木造建築の構造用下地材として使われている構造用合板は、屋根以外にも内壁や外壁、床の下地でも活用されています。
通常の合板や単層ベニヤよりも安全性や耐震性に優れており、別名「構造用パネル」と呼ばれているケースもあります。
なお、日本農林規格 (JAS) によって定められている合板になるため、裏面には必ずJASマークが印字されています。
バラ板
一昔前の建物に多く採用されていた下地材が「バラ板」です。90~120mm程度と、片手でも持てる小さなサイズの幅にカットされている杉材で、別名で「小幅板(こはばいた)」とも呼ばれています。
現在主流の構造用合板とは違って、板と板の間に隙間を開けながら貼り付けていくため、通気性のよい工法として多く採用されていました。
しかし、近年ではルーフィングや屋根材・工法の品質も向上したため、一部の例を除き、施工性の高い構造用合板を使うケースがほとんどです。
耐火野地板
火災の危険性を予防するために建物の構造面から規制をする「防火地域」「準防火地域」に該当する物件の場合、構造用合板ではなく「耐火野地板」を採用しなければなりません。
なお、この耐火野地板は耐火性や防音性のほか、断熱性も期待できる建築資材になるため、大規模施設にも幅広く採用がされています。
また、この耐火野地板には、ニチハの「センチュリー耐火野地板」や栄進工業の「ショーカラボード」など、さまざまな種類が発売されています。
野地板のメンテナンス方法とは?
野地板にも短期間ではなく、定期的にメンテナンスをする必要があります。
メンテナンス方法としては、「増し張り」、「張り替え」の二種類があります。
野地板のメンテナンスは、屋根材と防水シートをはがす工程を踏まないと施工することが出来ないため、屋根の葺き替え工事のタイミングで通常は行います。
それぞれ詳しく解説していきます。
増し張り
野地板の増し張りとは、その名のとおり野地板(構造用合板)を増し張りをすることです。
野地板の増し張りを行うことによって、屋根の重量が重くなってしまいますが、強度が高くなるため地震や台風などに対しての耐久性が高くなります。
張り替え
野地板の張り替えとは、腐食している野地板を剥がして、新しい野地板(構造用合板)を張っていく方法です。
野地板は水分を吸収してしまうと、どうしても腐食してしまいます。野地板の腐食を放置してしまうと野地板全体に広がってしまうため野地板の張り替えを行います。
屋根工事に使用する構造用合板の費用は?
構造用合板1平米あたりの費用は、「1,000円前後/㎡」です。
それに施工費用がプラスされると「1,800~2,200円/㎡」が相場となります。
一戸建ての屋根の大きさが「30坪」くらいで、「約75㎡」となります。
この構造用合板を張り増しした場合は「13.5万~16.5万円」になる計算です。
また、準防火地域や防火地域などに使用する耐火野地合板1枚あたりの費用は、「2,500円前後/㎡」と少し高くなります。
屋根工事に構造用合板が必要な理由
屋根葺き替え工事
建物の経年劣化によって屋根の葺き替え工事を行う際は、新しく構造用合板を張る必要があります。
新しい屋根材は野地板に釘を固定して留めていきますが、既存の屋根材を剥がした際に野地板が傷んでしまいます。
また、年数が経過した野地板も古くなり傷んでいることがほとんどです。
傷んだ野地板に新しい屋根材を仕上がていくにはリスクがあるので、新しい構造用合板が必要になるのです。
屋根のカバー工事
屋根リフォームには、葺き替え工事の他にもカバー工法という選択肢もあります。
カバー工法では、既存の屋根材や下地材の解体をせずに、新しい屋根材を施工していきます。解体や撤去をしないので廃材も少なく環境にも優しい工法になります。
下地材の解体を行わないので、カバー工法では構造用合板を使用することがありません。
ただし、「30年以上経過した屋根」や「雨漏りした屋根」の場合は、野地板が腐食している可能性があります。
そのような場合は、新しい構造用合板を張って仕上げる必要があります。
まとめ
屋根工事に使用する合板は、基本的に構造用合板です。構造用合板とは住宅の構造部分に使用される非常に重要な建材です。
ベニアやコンパネとの違いがあり、適所に構造用合板を使用します。
また、建物の地域によっては、耐火野地合板を使用することが義務付けられているので注意が必要です。
そのほか、特類や1類、2類などの構造用合板の種類をしっかりと把握した上で屋根工事に使用することが大事です。