自然災害の多い日本では、地震や台風などにより屋根材が滑り落ちてしまうといった被害が多発しておりました。
それらを防ぐ為に定められたのが、新たな施工基準である「ガイドライン工法」です。
ここではガイドライン工法について説明していきたいと思います。
屋根の新たな施工基準であるガイドライン工法
ガイドライン工法とは、地震や台風による屋根材の滑り落ちなどを防ぐ為に設けられた新たな施工基準です。
1994年に発生した大型地震「阪神淡路大震災」では多くの住宅が崩壊しただけでなく、屋根材の落下による二次災害も多くみうけられました。
大型地震を受け、住宅の耐震基準が見直され始めただけでなく、屋根設計基準も見直されることとなりました。
その結果、2000年に建築基準法改正が行われ、それに合わせて瓦業界団体で2001年にガイドライン工法が定められました。(この時点ではガイドライン工法に法的義務はありません)
その後、2022年に法律が改正されて、より強固な瓦屋根対策(瓦すべての固定化(緊結))が義務付けられました。(改正内容はガイドライン工法がベースとなっています)
ガイドライン工法は「国立研究開発法人、建築研究所」にて監修されております。
実際に大規模地震同様の条件下において旧工法と比較実験が行われ、被害が1/4以下になったという効果が証明されております。
ガイドライン工法で何が変わった?
ガイドライン工法は、粘土瓦及びセメント瓦を対象とした工法です。
従来の施工方法に対し、大きく3つの変更点があります。
①固定する瓦の数
瓦の施工には「引っ掛け桟葺き」「土葺き」といった工法があります。
現在では、地震対策から「引っ掛け桟葺き」が主となっています。
この2つの固定方法は異なりますが、どちらも軒先から棟に向かい瓦を重ね合わせていくという葺き方です。
変更前
瓦は4枚につき1枚だけ釘で固定するといった方法がとられていました。
変更後
ガイドライン工法で見直されたのは、瓦を固定する間隔です。
「瓦4枚につき1本(釘)」の固定から原則「瓦1枚につき1本(釘)」固定するという施工方法に定められました。
また固定の際には釘だけでなく、ビスが使用されるようにもなっています。
②瓦の固定方法
従来の棟瓦の積み方は、葺き土や漆喰を用いて土台を形成してから「のし瓦」を積み、緊結線で巻いて固定して仕上げるのが通常でした。
変更前
棟瓦の固定は「葺き土や漆喰」と「緊結線」だけに頼っているため、大きな地震がくると歪みや崩れてしまうリスクがありました。
変更後
棟内部に「棟補強金物」を取付け、金具に取付けた芯材と冠瓦をビスで固定して強度を上げる工法に変わりました。
また、のし瓦同士を緊結線で結んでいます。
③防災瓦の使用
ガイドライン工法では「防災瓦」の使用も定められました。
防災瓦とは、従来の瓦を機能面で進化させた瓦で、とくに下記の2点が優れています。
対落下性
防災瓦は従来の瓦と違い、瓦本体の上下に計4箇所の爪があります。
その爪を利用し瓦同士を引っ掛け合うことで、対落下性が向上しました。
軽量化
防災瓦は従来の瓦の1/2ほどの重量になり、建物に掛かる負担も軽減されました。
現在、メーカーが製造する瓦の殆どが防災瓦になっていますので、安心して瓦を選択することが出来ます。
ガイドライン工法は義務ではない?
ガイドライン工法は「新築時や増改築時」が対象となり、既存瓦屋根のリフォーム施工時に取り入れるかは義務付けられておりません。
ガイドライン工法は旧工法に比べて、「施工手間、材料費が掛かる工法」なので、特に工法を指定しない場合は旧工法で施工を行うケースも多いです。
ですが、旧工法では年数が経過するにつれ被害リスクが高まります。また、近年の災害を受けて、将来的にリフォームでも義務化される可能性がでてきています。
補助金等も活用できるケースもありますので、可能であれば地震がきても安心できる「ガイドライン工法」での施工がおすすめです。
まとめ
瓦屋根は、メンテナンスフリーで自然災害の強いというイメージを持っている方も多いと思います。
ですが、実際にはその重さから地震時の負担も大きく、台風で瓦が飛ばされてしまう事が多い屋根材です。
そこで、2001年に定められたガイドライン工法を用いることで、他の屋根材と変わらない対災害性能を持つことが出来ます。
安心して過ごす為にも、瓦を採用する際はガイドライン工法での施工をおすすめいたします。