住宅の屋根には切妻(きりつま)、寄棟(よせむね)など、様々な形状の屋根があります。
その形状によりメリットやデメリットがあるだけでなく、メンテナンスの方法も変わってきます。
その屋根形状の中でも、少し複雑で珍しい『腰折れ屋根』についてここでは紹介していきます。
腰折れ屋根とは
腰折れ屋根(別名:ギャンブレル屋根)とは、切妻屋根を途中から勾配をつけて二段に折り曲げた、少し複雑な形状の二段勾配屋根です。
元々はヨーロッパの住宅に採用されており、その後アメリカや日本の住宅でも採用されるようになりました。
その複雑な形状から、腰折れ屋根にはそれぞれメリット、デメリットがあります。
腰折れ屋根のメリット
屋根裏の空間が広くなる
腰折れ屋根にすることで、一般的な切妻や寄棟よりも屋根裏の空間を広く確保することが出来ます。
その空間を利用し、部屋の天井高を高くしたり、屋根裏部屋を作るといったことが可能になります。
水はけが良くなる
腰折れ屋根は2段階に折れ曲がっている為、必然的に急勾配な屋根になります。
屋根は雨などで濡れることでコケが生え、水が溜まることで雨漏れが発生したりします。
急勾配な腰折れ屋根は雨が捌けやすいことから、コケが生えにくく、雨漏れがし辛い構造になっております。
また寒冷地などでは雪が積もり辛いというメリットもあります。
狭い土地に対応出来る
住宅は敷地内に収まるように建設をしなくてはなりません。
狭い土地で住宅を建てる際、一般的な形状だと屋根が敷地を越えてしまうといった場合は、腰折れ屋根を採用し対応することがあります。
また、住宅街などの住宅が密接している場所では、隣家への日射を遮らないようにするといった理由で腰折れ屋根を採用することもあります。
腰折れ屋根のデメリット
屋根裏の空間が狭くなる
これはメリットで上げた点と真逆の解釈になります。
住宅には通気や断熱といった理由から、屋根裏(天井裏)には空間の確保が必須となります。
室内の天井高を確保したり、屋根裏部屋を作ることで屋根裏(天井裏)の空間は狭くなります。
空間が狭くなることで通気が十分に行われなくなったり、屋根に近いことで外気の熱気や冷気が室内に伝わり易くなったりもします。
また、雨音などが大きく感じてしまうこともあります。
腰折れ屋根の場合は、空間をどのように利用するかは慎重に判断した方がが良いでしょう。
雨漏れが起こり易い
腰折れ屋根は急勾配によりコケが生えにくく、雨漏れし辛いと前述致しました。
しかし、腰折れ屋根は勾配が変わる境目があり、その境目からは雨漏れがし易い屋根になります。
屋根材が金属屋根の場合は、境目に対応した板金役物で雨仕舞いの処理が行えますが、スレート場合は雨仕舞いが難しく、雨漏れに繋がるケースが多くなってしまいます。
メンテナンスの際に別途費用が発生する。
屋根は10年に一度のペースで塗装や葺き替えなどのメンテナンスを行う必要があります。
その際、腰折れ屋根は勾配が急な為、別途料金で落下防止の屋根足場を設置する必要があります。
また金属屋根での葺き替えや重ね葺きの場合は、勾配が変わる境目に専用の役物を使用する為、別途料金が掛かる場合があります。
使用できない屋根材がある
屋根材によっては急勾配に対応していない屋根材があります。
葺き替えの際など、希望の屋根材が使用できないといった状況になることもあります。
太陽光パネルが設置できない
腰折れ屋根は屋根自体の面積が狭くなってしまう為、太陽光パネルの設置が出来ないという場合があります。
まとめ
腰折れ屋根は日本では珍しく、意匠性のある屋根形状です。
しかしその多くは、住宅地などで敷地が狭いといった状況により、採用せざるを得ない状況で採用されることが多い屋根形状でもあります。
屋根の形状は一般的に、シンプルであればあるほど、雨漏れもし辛くメンテナンスも行い易いです。
一方、敷地の狭さや、隣家との距離、日射問題などを解決したり、屋根裏部屋の設置などを行うには最適な選択肢になることもあります。
腰折れ屋根のリフォームをする場合は、通常の屋根とは「費用面や屋根材選び」など変わるため注意が必要です。