茅葺屋根(かやぶきやね)という屋根をご存知でしょうか?
日本の風土に息づいてきた伝統的な屋根で、世界文化遺産の白川郷などで見られることで有名です。
しかしながら、この茅葺屋根について詳しく知る方は少ないかと思います。
そこでこの記事では、あまり知られていない茅葺き屋根のメリット・デメリット、メンテナンス方法について紹介していきたいと思います。
茅葺屋根とは?
茅葺屋根は実は瓦屋根よりはるか昔から採用されており、非常に伝統ある屋根です。
日本の伝統ある屋根と言われることもありますが、世界各地でも見つかっており、歴史上最も原始的な屋根とも言われております。
茅葺屋根とはその名の通り、茅(かや)を葺くことで仕上げられる屋根です。
茅とは、「ススキ、ヨシ、藁、イネ」などの多年草を指しています。
それらを束ねて並べていくことで、屋根としての機能を発揮しています。
茅葺き屋根のメリット
茅葺屋根には、意外と思われるメリットがあります。
それは、「防水性」の高さと「機能性」の良さです。この2つについてご紹介します。
非常に高い防水性
「多年草を重ねただけでは隙間があるし、すぐに雨漏れするのでは?」と思われる方も多いと思います。
しかし茅葺き屋根は非常に防水性に優れた屋根なんです。
それは棒状の多年草をいくつも束ねて葺くことで導水効果が生まれ、表層しか水が流れないという現象が起きるからです。
その為、屋根の内部までは水が侵入することがなく、むしろ雨漏れに強い屋根なんです。
また他にも雨漏りに強い理由として、急勾配であるという点が挙げられます。茅葺き屋根は現代の屋根に比べ、かなり急勾配に設計されています。
これは屋根に雨水が溜まっていくのを防ぐ為や、積雪による荷重を避ける為です。
優れた機能性
住宅の屋根はさまざまな機能が求められます。
茅葺き屋根はそういった機能面でも非常に優れた屋根材です。
茅葺き屋根の住宅に入ったことがある方は、その涼しさ、静かさに驚かれたかと思います。
茅葺き屋根は多年草を何重にも束ねて葺くことで、高い遮熱性・断熱性・吸音性を発揮しているからです。
またいくつもの隙間があることから通気性も抜群で、非常に暮らしやすい快適な住空間を作り上げてくれます。
茅葺き屋根のデメリット
メリットが非常に多い茅葺き屋根ですが、現代で使用されなくなってしまったのには理由があります。
ここからは茅葺き屋根のデメリットについて紹介していきます。
耐火性
茅葺屋根は素材の影響もあり、非常に「耐火性が低い屋根」です。
火がついてしまうとすぐに延焼し、甚大な被害を与えてしまうというデメリットがあります。
台風性
茅は非常に軽い材料です。
その為、台風などの強風を受けるとすぐに「吹き飛びやすい」というデメリットがあります。
耐久性
茅は自然素材でもある為、現代の窯業系屋根や金属屋根に比べ「素材本来の耐久性が低い」というデメリットがあります。
その為、こまめに手入れを行わないと維持することができません。
茅葺き屋根のメンテナンスについて
茅葺き屋根には3つのメンテナンス方法があります。
①全面を葺き替える「丸葺き」
②屋根をいくつかに分割し葺き替える「分割葺き」
③劣化がひどい部分だけ茅を差し込むことで補修する「差茅」
です。
昨今では茅葺屋根の施工が行える職人も減少してきていることから、メンテナンス費用も高くなってきております。
一般的な大きさの茅葺屋根で、「分割葺き」は500万円ほど、「丸葺き」は2000万円ほどと言われております。
最後に
資料などで一度は目にしたことがある茅葺屋根ですが、防水性に優れたり、機能性に優れているといった事実を知らなかった方も多かったのではないでしょうか。
茅葺屋根に触れる際は、そういった視点で見てみることで新たな発見があるかもしれません。