屋根に隙間の空いた部材が何箇所か設置されているのをご存知でしょうか?この部材は屋根内部の換気を目的に取付けてあり、とても重要な役割を果たしています。
とくに近年では、高気密高断熱住宅の普及によって、この屋根換気(やねかんき)の重要性が高まってきています。屋根裏の熱気や湿気を効率的に排出することで木材の腐食や劣化を抑え、室内の温度上昇抑制にも影響するためです。
ここでは、そんな屋根換気の種類やそれぞれの特徴について解説していきます。
屋根換気の種類
屋根換気には設置する場所によって、換気棟や妻換気などさまざまな種類があります。複数の屋根換気を併用することで、換気効率をアップさせることが可能になります。
換気棟
換気棟の特徴
換気棟は屋根の頂部に設置する換気システムです。
壁や天井に断熱材を使用している建物の場合は、屋根裏に熱気や湿気が籠りやすくなります。また冬場は、冷たい外気との温度差によって結露を発生させます。結露は屋根裏の木材の腐食や劣化を早める原因にもなります。この屋根裏に籠った熱気や湿気を効率的に排出するため、そして結露を防ぐために換気棟が重要な役割を担っています。
材質は主にガルバリウム鋼板製が多く使われています。屋根の頂部にあたる棟部分に設置することから耐久性の高い素材としてガルバリウム鋼板が採用されています。
メリットとデメリット
■メリット
換気棟のメリットは高気密高断熱の住宅の快適さを保ちつつ、屋根裏の熱気や湿気を排出し建物の腐食や劣化を抑える効果が期待できることです。換気棟では自然換気によって熱気や湿気を排出するため、機械換気のような電源や窓の開け閉めなどの手間も必要ありません。一度設置してしまえば常に換気システムが稼働している状態になります。
■デメリット
換気棟のデメリットは、施工不良による雨漏りの可能性があることです。屋根に穴の開いた部材を設置するためしっかりとした施工が必要になります。換気棟の設置経験の少ない業者が作業することで、雨漏りにつながることもあるため依頼する業者選びが重要になります。
天窓換気
天窓換気の特徴
天窓換気は屋根に設置した窓から空気を排出する換気窓のことです。
夏の暑い日には室内の熱気は高い場所に流れていき、その天井付近に溜まった熱気は、室内の冷房効果にも影響します。
そこで天井に設置されたこの天窓を開けることで熱気が室外に排出されるため、効率的な熱気対策となります。また室内の低い位置の窓を開けて吸気を行い、天窓から排気する方法は煙突効果ともよばれており効果的です。
メリットとデメリット
■メリット
天窓換気のメリットは自然換気の効率アップのほかにも防犯性の高さがあります。天窓は天井や屋根付近に設置するため、夜間に開けておいても心配がありません。室内では空気が上昇する性質を活かした換気システムとも言えます。
■デメリット
天窓換気のデメリットは、経年劣化による雨漏りの可能性があることです。天窓の設置経験の豊富な施工業者が行った場合でも、雨仕舞の不良や劣化によって雨漏りにつながることがあります。また天窓の設置位置によっては、太陽光が直接目に入ることで眩しさを感じてしまうことがあります。さらに太陽光による室内の温度上昇の原因になることもあります。
妻換気
妻換気の特徴
妻換気は屋根裏の壁に設置する換気口でガラリともよばれています。屋根裏の換気だけでなく建物のデザインとして取り入れられることもあります。
風通しの良い妻側の外壁に設置することで効率的な吸気や排気を行うことができ、妻換気単体での設置よりも、換気棟や軒天換気口と併用することでより効率的に屋根裏の換気を行うことができます。
妻換気は、その設置場所の性質上雨風の影響を受けやすいため、ルーバー構造の通気口や換気フードを採用することで雨風の吹き込みを抑えています。
メリットとデメリット
■メリット
妻換気のメリットは屋根裏の換気を行うと同時に建物の外観のアクセントにもなることです。多少の吹き込みはありますが換気棟のように屋根に穴を開けて設置する必要がないため雨漏りの心配も軽減されます。
■デメリット
妻換気のデメリットは、雨の吹き込みのほかにも鳥や蝙蝠などが入り込みやすいことです。通気のためのわずかな隙間であっても入り込んでしまうため、妻換気を設置する際には通気口にメッシュが貼られた換気フードを選ぶなどの工夫が必要です。そのほか、屋根裏の外壁に設置する換気のため、屋根の形状によっては設置できないケースもあります。
軒天換気口
軒天換気口の特徴
軒天換気口は、軒天上に穴を開けて設置する換気口です。換気棟や妻換気などに比べて雨漏りや吹き込みが少なく、多くの住宅で採用されている換気システムです。ただし、軒天換気口は吸気を目的に設置されることが一般的で、排気のための通気口がない場合には屋根裏の換気効率は高くありません。
軒天換気の材質には、軒天に穴を空けてそこにプラスチックやアルミの換気役物を取付けるタイプの他に有孔ボード(穴が空いた板)を張って換気を行うケースもあります。
メリットとデメリット
■メリット
軒天換気口のメリットは、台風などの強風時であっても雨の吹き込みが少ないことです。また使用する換気口によっては費用を抑えることも可能です。
■デメリット
デメリットは吸気を目的に設置されるため、排気口となる換気棟や妻換気と併用しない場合には屋根裏の換気を効率的に行えないことです。そのほか、取付けている軒天ベニヤやケイカル板は劣化するため、取付け板に傷みが出た場合は一緒に交換する必要がでてきます。
屋根換気は後付けできる?
屋根換気は、基本的に後付けが可能です。
■換気棟の後付け
換気棟の後付けは、既存の棟板金を撤去した後に防水シートと野地板をカットして専用の換気棟(板金材)を取付けていきます。
■天窓の後付け
天窓も既存の屋根材と防水シート、野地板をカットして新しく天窓の取付け可能ですが、周辺の屋根リフォームやその後の雨漏りリスクが高いためあまりおすすめしていません。
■妻換気、軒天換気口の後付け
妻換気や軒天換気口もそれぞれ妻側の外壁や軒天に穴を空けて、新しく換気口を設置していきます。
※後付けを行う場合の注意点▼▼
注意点として、各種換気部材には既定の寸法があるため、部材の寸法幅に合うスペースが無いと取付けることができません。
また、住宅の断熱方法によっては、屋根換気を後付けすることで断熱性能を低下させてしまうこともあるので注意が必要です。
最後に
屋根の換気の種類は主に、「換気棟」、「天窓」、「妻換気」、「軒天換気口」などがあります。
屋根裏の換気として、「換気棟」、「妻換気」、「軒天換気」を併用させるとより効果的となります。逆にどれかひとつだけですと、あまり効果がでないため注意が必要です。
屋根換気は後付けも可能ですので、夏場の熱気や冬場の結露対策などをお考えの方は屋根換気の取付けをご検討してみてはいかがでしょうか。