瓦屋根

 

日本の伝統的な屋根瓦は、一般的な瓦だけでなく、鬼瓦ケラバ軒先など多くの部位から成り立っています。台風や強風によって屋根の修理を依頼したい場合には、専門的な名称も多く正確に伝えることが難しいケースがあります。

ここでは屋根瓦のそれぞれの役割や名称について紹介していきます。

屋根瓦の名称と役割

 

屋根瓦は使用される場所とそれぞれの役割によって名称がつけられています。ここでは屋根瓦の名称と役割について紹介していきます。

 

屋根瓦(平部)

瓦屋根

 

桟瓦

 

桟瓦(さんがわら)屋根の平部に使われる瓦の名称で断面が波状をした瓦です。この桟瓦は屋根全体に使用される瓦で、野地板に固定した桟木に引っ掛けて施工を行います。

桟木に引っ掛けて施工することで、瓦のひび割れなどが発生した場合でも1枚単位で交換が可能になります。一般的な瓦屋根を指していることが多く、桟瓦以外の瓦は役物と呼ばれています。

 

軒瓦

 

軒瓦(のきがわら)軒先に設置された瓦の名称です。屋根をつたった雨水を雨どいに流す役割があり、軒瓦の中央部分がへこんでいることでスムーズな排水が可能になります。

軒瓦は地面と水平に設置され外部から良く見える部分のため、家紋や絵柄などをデザインした瓦も多くあります。

 

雪止瓦

 

雪止瓦(ゆきどめがわら)はその名の通り屋根に積もった雪を止めるための瓦材です。一般的に軒先から3列目あたりに設置される突起のある形状の瓦です。

横一列に配置されるほかにも千鳥に配置されたり、豪雪地域などでは雪止め瓦を2重に設置するケースもあります。

 

角瓦

 

角瓦(かどがわら)軒と破風が交わる部分に設置される瓦の名称です。ケラバに設置される袖瓦と軒瓦の特徴を併せ持っています。

ケラバと軒先の両方をカバーすることができる形状です。さらに瓦と雨どいが干渉しないように先端に欠き取り部分があります。

 

袖瓦

 

袖瓦(そでがわら)切妻屋根などの妻側に設置される瓦の名称です。屋根の地面と水平でない部分をケラバと呼ことから、破風に使われる袖瓦をケラバ瓦と呼ばれることがあります。破風に垂れ下がるような形状の瓦を外側に設置します。

垂れ下がった部分が屋根下地の断面を塞ぐことで雨水が侵入するのを防ぐ役割を担っています。また袖の大きさによって大袖瓦小袖瓦に区別されます。瓦の左側に袖がある場合には左袖、右側にある場合には右袖と呼ばれます。

屋根形状の種類について詳しくはこちら>>

 

掛瓦

 

掛瓦

掛瓦(かけがわら)箕甲(みのこ)部分に設置される瓦の名称です。箕甲部分は切妻屋根や入母屋屋根の破風に近い部分で曲面になった場所です。掛瓦には屋根の傾斜と直行するように雨水を破風側に流す役割があります。

和風建築やお寺や神社で使われることが多いです。また掛瓦には簡略葺き用と本葺き用があり使用される建物の意匠性や格式などの重厚さを表すためにも使われています。

 

屋根瓦(棟部)

 

鬼瓦

 

鬼瓦(おにがわら)屋根の棟部に設置される瓦の名称です。屋根瓦の役物ので厄除けや装飾のためにデザインされた鬼瓦も多くあります。棟の先端に設置することで、棟部に積み上げた熨斗瓦の端部を塞いでいます。

鬼瓦はデザイン性だけでなく棟部から雨水が侵入するのを防ぐ重要な役割を担っています。棟部に熨斗(のし)瓦を積まない場合には、鬼瓦の代わりに棟止め瓦を使用することも増えています。

 

巴瓦

 

巴瓦(ともえがわら)鬼瓦よりも外側の棟部に設置する瓦の名称です。丸い形が特徴的な瓦で先端に巴紋をつけたことが名称の由来とされることがあります。

巴紋は水が渦を巻いているように見えることから防火や火の用心の意味をこめて設置されることもあります。

 

のし瓦

 

のし瓦屋根の頂上付近にある棟部に設置される瓦の名称です。台のし瓦の上に積み上げられる瓦がのし瓦です。のし瓦は棟部の水切りや雨よけなどの役割を担っています。つなぎ目からの雨水の侵入を防ぐために、位置をずらしながら積み上げていきます。

のし瓦の段数によって家の風格が出されていたこともあります。屋根のデザインを決める重要な役割もあるため段数や使用するデザインにも考慮する必要があります。

 

冠瓦

 

冠瓦(かんむりがわら)棟部の一番高い場所に設置される瓦の名称です。のし瓦の上に設置することで雨水の侵入を防ぐ役割を担っています。

サイズによって6寸丸や7寸丸などの円形の冠瓦と平らな紐伏間や京伏間などの伏間瓦に区別されることが多いです。使用する冠瓦の形状や意匠によって屋根の雰囲気は変わります。

 

隅瓦

 

隅瓦

隅瓦(すみがわら)軒と軒が交差する屋根の隅に設置される瓦の名称です。

軒と軒が交差しない切妻屋根で使用することはありません。寄棟の屋根で使用される廻隅や入母屋で使用される切隅などの種類があります。

 

屋根瓦の寸法

瓦寸法

 

屋根瓦の寸法は全長と利足、利幅で表現されます。

全長は瓦全体の寸法で利足や利幅は屋根に葺いた際に見える寸法です。

瓦名称 全長 全幅 利き足(働き長さ) 利き幅(働き幅)
桟瓦 305㎜ 305㎜ 235㎜ 265㎜
軒瓦 305㎜ 305㎜ 235㎜ 265㎜
袖瓦(右) 305㎜ 305㎜ 235㎜ 305㎜
袖瓦(左) 305㎜ 265㎜ 235㎜ 225㎜
のし瓦 265㎜ 205㎜

 

日本瓦は「1坪あたり53枚」の瓦を使用することから53Aとも呼ばれています。

 

屋根の部位の名称

平部

 

屋根瓦だけでなく屋根自体の部位にもさまざまな名称があります。ここでは屋根の部位の名称について紹介していきます。

 

棟部

 

棟部屋根の最も高い部分の名称です。屋根頂上の水平部分で、のし瓦や冠瓦などが設置されている部分を棟部と呼びます。

 

ケラバ部

 

ケラバ部切妻屋根や片流れ屋根の妻側の端部の名称です。ケラバ部は地面と水平でない屋根で妻側は雨どいが設置されていない部分を探すことで見つけやすくなります。

ケラバ部には破風が設置され屋根の内部への雨水の侵入を防ぐ役割があります。

 

軒先部

 

軒先部建物の外壁部分よりも突き出している屋根の名称です。軒先部は地面と水平で雨どいが設置されています。

軒先の出によって外壁にかかる雨や日当たりを調整することが可能です。また軒先の出の長さは建物の意匠性やデザイン性にも大きく影響します。

 

平部

 

平部屋根の平らな部分の名称です。一般的に屋根と呼ばれる部分は平部を指すことが多く、屋根の部位の中でも最も広範囲になります。

 

隅棟部

 

隅棟部

隅棟部水平に設置された大棟から軒先方向に斜めに施工された部分の名称です。

寄棟や入母屋などの屋根に見られる部位で隅棟部の左右それぞれの屋根面のつなぎ目の役割があります。

下り棟(飾り棟)

 

下り棟

下り棟(飾り棟)平部に設置された棟部分の名称です。屋根に下り棟や飾り棟を設置することでデザイン性や格式などを表現するために設置されています。

大棟や隅棟とは異なり、屋根本来の雨水の侵入を防ぐ役割としては機能していません。

谷部

 

谷部

谷部屋根面同士が合わさった部分の名称です。それぞれの屋根面の間には隙間があり、板金や銅板などによって雨仕舞が行われます。

谷部を流れる雨水は多く、経年劣化などによって劣化が進行している場合には雨漏りの原因となることが多いです。

大袖瓦、小袖瓦

 

大袖瓦
大袖、小袖屋根のケラバ部分に設置された瓦の名称です。軒先から見て右側を大袖、左側を小袖と呼びます。

面戸漆喰

 

面戸漆喰

面戸漆喰棟部の土台と平部の隙間を埋めるために設置する漆喰の名称です。棟部の土台に直接雨水が当たらないように塗られています。

また面戸漆喰が劣化すると、土台内部の土が流れてしまう可能性もあります。現在では面戸漆喰などを使った湿式工法だけでなく、土台を木材と専用金物で作る乾式工法も取り入れられています。

 

瓦屋根のメンテナンス方法について

のし瓦1段目

 

一般的に瓦屋根に使用される日本瓦の耐用年数は50年から100年ともいわれています。しかし瓦自体の耐用年数が長くてもメンテナンスが全く必要ないわけではありません

棟瓦のし瓦の固定などに使われる漆喰経年劣化によって割れや剥がれが起きやすくなります。また飛来物によるひび割れズレ、落下の可能性もあります。

日本瓦を使用した屋根であっても定期的な点検やメンテナンスが必要です。

また瓦屋根に使用されている瓦がセメント瓦やコンクリート瓦などの場合には、経年劣化によって防水性能が低下してしまうこともあります。カビやコケが発生しやすく、色褪せなども目立ってしまうため再塗装などのメンテナンスが必要です。

 

最後に

 

屋根瓦と言っても部位によって、多くの種類や名称があります。

何か瓦屋根の修理を行う際に、種類や名称を知っておくことで役立つこともあるので、是非参考にしてみてください。