倒壊した瓦屋根

 

地震大国である日本では、地震に対する備えが欠かせません。

非常食や家族との連絡手段など地震が起こってからのことを見据えた準備も大事ですが、一戸建ての場合は被害を最小限に抑えるために「耐震に対する知識」は必要です。

その中でも一戸建ての屋根は耐震性能と大きく関わっており、屋根の重さは特に重要なポイントです。

ここでは、屋根の重さと地震との関係、そして様々な屋根材の重さなどをくわしく解説していきます。

重い屋根は地震の影響が大きい?

構造躯体

 

地震が起きた時に重たい屋根と軽い屋根では影響に差が生まれ、重たい屋根ほど地震による建物への負担は増えます。

もちろん、重たい屋根だから一概に「耐震性が悪い」というわけではなく、あくまで柱などの構造躯体の条件が同一の場合の話となります。

実際には重たい屋根を使用する場合、それ相応に耐震性能を備えた強固な作りにするのが一般的なので、重たい屋根だからと言って問題が起こるわけではありません。

結論としては、重たい屋根の方が建物への負担は大きいが、それ相応に躯体がしっかりしていれば問題はないのです。

 

将来的に屋根は軽い方が良い?

ガルバリウム鋼板

 

重たい屋根でも、新築時には問題がなかったとしても年数が経つとどうでしょうか?

実は、将来的には重たい屋根から軽い屋根に交換した方が良いケースもあります。

それは、どのような状況なのか解説していきます。

 

経年劣化で耐震性能が下がる?

 

年数経過に伴い、建物も劣化します。

とくに、定期的なメンテナンスを怠ってしまうと、よりその速度は高まります。

劣化状況によっては、耐震性能が低下しているケースがあり、重たい屋根だと倒壊の恐れがでてくることも。

とくに下記症状があると注意が必要です。

・雨漏りによる躯体腐食

・シロアリの発生

・基礎のひび割れ、損傷

内部の柱などは、解体してみないとみえません。

定期的なメンテナンスを怠り、構造躯体の劣化や腐食が気になる場合は、対象箇所の修理や耐震診断、そして、状況によって軽い屋根へのリフォームを行って対策する必要があります。

 

昭和56年以前の建物は補助金が出る?

 

建築基準法の改正に伴って、昭和56年6月以降に耐震基準が変更され、それ以前の古い建築基準法に則って作られた一戸建ての場合、「耐震改修工事で補助金」が支給されます。

補助金の対象には屋根の軽量化も含まれており、屋根を軽くすることで耐震性能アップの期待が持てると考えてよいでしょう。

屋根以外の部分も耐震性能に関係しているため、屋根のリフォームだけで必ずしも十分な耐震性能が得られるわけではないものの、地震対策を検討しているのであれば屋根の軽量化を行った方が良いでしょう。

 

屋根材別の重さは?

 

屋根材の重さですが、建築基準法で「重い屋根、軽い屋根」に分類されており、それぞれ「㎡(平米)」単位の計算で、どれくらいの重さ(kg)になってくるのかご紹介します。

それぞれで、野地板や防水シートなどの重さは含めていません。

 

重たい屋根

瓦屋根

 

屋根材 重さ(kg/㎡)
土葺き屋根(粘土瓦) 約70kg/㎡
葺き土無し(粘土瓦) 約45kg/㎡
セメント瓦 約45kg/㎡

 

土葺き屋根は、下地に大量に使うことから、非常に重い屋根となっており、屋根材の中でも最も重たい部類です。

葺き土を使わない粘土瓦とセメント瓦は、次に重い屋根となっており、土葺き屋根と比べるとまだ軽いものの屋根材の中ではかなり重たい方だと考えてください。

この「粘土瓦やセメント瓦」の屋根は、その重さに応じた耐震性能が必要となります。

年数が経ち、躯体の経年劣化が心配の場合は、葺き替えをご検討ください。

 

軽い屋根

リッジウェイ葺き替え

 

屋根材 重さ(kg/㎡)
化粧スレート 約20kg/㎡
軽量屋根材(ルーガ) 約20kg/㎡
アスファルトシングル 約10kg/㎡
自然石粒付鋼板 約6kg/㎡
ガルバリウム鋼板 約5kg/㎡

 

上記屋根材は軽い屋根に分類されており、特にガルバリウム鋼板は先に出てきた粘土瓦と比べるとおよそ約「1/10」の重さしかありません。

新築時では、「スレート」がよく採用されており、リフォーム時では、「ガルバリウム鋼板」がよく採用されています。

注意点としては、軽量屋根材と呼ばれる「化粧スレートとルーガ」はガルバリウム鋼板と比べるとおよそ「4倍」も重たく、同じ軽い屋根の中でもだいぶ重さは異なります。

そのため屋根リフォームを行う際は、軽い屋根材の中でも「重さ」をしっかりとチェックしてから選んでいくと良いでしょう。

 

軽い屋根へ葺き替える際の注意点

 

軽い屋根へリフォームするのであれば、現在の瓦屋根を撤去して新たに軽い屋根に替える「葺き替え工事」が基本です。

ですが、葺き替えと言っても「下地の野地板」をどうするかによって、重さが変わってきます。

野地板を「増し張りする工法」と「張替える工法」と2種類あります。

野地板の重さは、一般的な12mm厚のもで「約8kg/㎡」です。

この野地板を増し張りすると、新しい屋根材料「野地板」の重さがプラスされるため注意が必要です。

 

葺き替え(野地板増し張り)

 

葺き替え工事(野地板増し張り)の手順

①既存瓦屋根の撤去

②構造用合板(野地板)張り

③防水シート張り

④新規屋根材張り

 

野地板は、張替えるよりも、増し張りするケースが比較的多いです。

 

メリット

 

メリットとして、張り替える手間や廃材処分費が削減できるためです。

また、野地板を剥がすと、固定している垂木を傷めてしまう事があります。

廃材もかなりの量がでて、屋根内部の清掃がとても大変となります。

 

デメリット

 

デメリットは、屋根材の重さに野地板がプラスされてしまうという点です。

 

化粧スレートの場合:「20kg」+「8kg」=28kg/㎡

ガルバリウムの場合:「5kg」+「8kg]=13kg/㎡

 

となります。

葺き替え(増し張り工法)で、スレート屋根を採用すると、粘土瓦に比べると軽いですが、少し近づいてしまいます。

そのため、葺き替えを検討される場合は、この野地板の重さを考慮した上で、新しい屋根材を選ばなければいけません。

この重さの点が、リフォーム工事で、ガルバリウム鋼板が選ばれる理由の一つとなります。

 

葺き替え(野地板張替え)

 

葺き替え(野地板張替え)

①既存瓦屋根の撤去

②既存野地板の撤去

③構造用合板(野地板)張り

④防水シート張り

⑤新規屋根材張り

 

野地板の張替えは、「野地板の腐食が酷い場合」や「部分的な葺き替えを行う場合」などに行っています。

全体的な葺き替え工事で既存の野地板の状態が良い場合は、ご指定がない限り張替えはほとんど行っていません。

メリット、デメリットは、上記の増し張り工法の真逆となります。

それなりに費用はプラスで掛かってしまいますが、古いものが取り除かれて、増し張りよりも軽い屋根に生まれ変わります。

 

まとめ

 

屋根の重さは、地震の影響に関係してはいますが、「重い」からと言って「耐震性が悪い」というわけではなく、それに応じて構造躯体がしっかりしていれば問題はありません。

ですが、経年劣化によって耐震性能が低下することもありますので、心配な方は屋根リフォームをご検討しても良いかと思います。

屋根が耐震性能の全てを担っているわけではないものの、屋根の軽量化により耐震性能アップに期待は持てます。

重たい屋根を使用している場合は、金属屋根などの軽い屋根にリフォームするのも選択肢の1つです。

そして、葺き替えを行う場合には、新しい屋根材の重さもしっかりとチェックして比較していきましょう。