スレート屋根は、戸建て住宅に最も多く使用されている屋根材です。
その種類は非常に豊富で、特殊な形状をしていたり、特別なメンテナンス方法を要する屋根材もあります。
ここでは、そんなスレート屋根の中でも少し特殊な「アーバニーグラッサ」について紹介していきます。
アーバニーグラッサとは
アーバニーグラッサとは、旧クボタ(現在はケイミュー)という建材メーカーが製造していたスレート屋根の商品のひとつです。
アーバニーグラッサは、横葺きの商品が多いスレート屋根の中では珍しく縦葺きの様なデザインで、高級感のあるお洒落な商品です。
しかしアーバニーグラッサはメンテナンスの際、取り扱いが難しいことでも有名な屋根材です。
アーバニーグラッサの特徴と合わせてどのようなメンテナンスが必要なのか説明したいとおもいます。
アーバニーグラッサは非常に割れやすい!
スレート屋根とはセメントを薄い板状に成形し加工した屋根材で、経年によりヒビが入ったり割れたりしてしまうという特徴があります。
中でもアーバニーグラッサは、特に割れが発生しやすい屋根材なのです。
割れやすい原因は主に2つあります。
特徴でもある縦葺きのようなデザイン
アーバニーグラッサの特徴は、縦葺きのような独特なデザインです。
一般的なスレート屋根は、1枚が横長の長方形なのに対し、アーバニーグラッサは少し縦長の長方形をしております。
その為、屋根材1枚辺りのサイズが小さく、強度が劣ってしまうという弱点があります。
ノンアスベストによる強度の低下
アーバニーグラッサは「1982年~2005年」まで製造販売されていた屋根材です。
また販売停止に至るまで、3度の仕様変更があった屋根材でもあります。
仕様変更をするに至ったのには、日本国内におけるアスベスト規制があった為です。
アスベストは天然繊維状鉱物で、耐火性、耐久性に非常に優れた材料です。
しかし、現在では一般的に知られているように、粉塵を吸い込むことで健康被害に多大なる悪影響を及ぼします。
そのため、1975年から日本国内でアスベストの使用規制が始まりました。
2004年までは「全体の1%重量まで」使用可能、2006年までは「全体の0.1%重量まで」使用可能といった段階的規制が行われ、2006年以降はアスベストの使用が「完全に禁止」されております。
アーバニーグラッサはアスベストの段階的規制に合わせてアスベスト含有量を減らしながら製造されてきました。
アスベスト含有量が少ない又はノンアスベスト仕様のアーバニーグラッサは、その転換の時期に製造されたため、長期的な耐久性のデータが足りおらず、その結果、「強度が低く、より割れやすい」商品になってしまったと思われます。
とくにノンアスベストのアーバニーグラッサは、より割れやすい商品で数多くの不具合が発生しています。
アーバニーグラッサは塗装が困難?
屋根材の多くは「10~15年」に1度、塗装によるメンテナンスが必要とされております。
しかしアーバニーグラッサは塗装が困難な屋根材でもあります。
特殊な形状から塗装に手間がかかる
アーバニーグラッサは一般的な屋根材と比べ、屋根材同士の間隔が広くなるように設計されております。
通常、屋根の塗装にはローラーを使用するのですが、屋根同士の間隔が広いことから一部ローラーでの施工が行えず、刷毛(はけ)による塗装が必要になります。
その為、通常の屋根塗装より手間が掛かる屋根材というわけです。
割れやすい
屋根は塗装を行う前に、下地処理という工程が必要です。
下地処理とは、高圧洗浄による古い塗膜の除去や、ケレンによる下地調整です。
アーバニーグラッサは前述したとおり割れやすい屋根材なので、下地処理の際に負荷が掛かり割れてしまうことが多く、塗装には向いていない屋根材というわけです。
そのほか、劣化していると屋根材の上を歩いただけでも、バキバキと割れてしまい、作業どころではないケースもあります。
アーバニーグラッサのメンテナンス方法は?
アーバニーグラッサは様々な理由から塗装によるメンテナンスに向いていない屋根材です。
塗装を行う場合は、アスベストを含有しているアーバニーグラッサまででしょう。
アスベスト含有材であれば、丁寧に塗装を行えば問題ないケースもあります。
しかし、ノンアスベストのアーバニーグラッサのメンテナンスでは、「葺き替え」か「カバー工法」がおすすめです。
前述したとおり、作業中に屋根材が割れるリスクが高いためです。
また、何とか塗装を終えても、その後塗膜が劣化した際の耐風性などの強度が心配となります。
台風や強風で飛ばされてしまう可能性もあるため、おすすめとしては「葺き替え」、「カバー工法」となります。
まとめ
アーバニーグラッサは独特な意匠性から非常に人気があった商品で、自宅に使用されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、その形状から割れやすく、そしてノンアスベスト材の場合はさらに割れやすくなっています。
屋根材が劣化してきたら、しっかりと商品の特徴を知って、メンテナンス方法についてご検討してみてください。