火災が発生した際に、すぐに燃え広がらないように工夫して造られているものを「耐火構造」と言います。
この耐火構造の他にも「準耐火構造」、「防火構造」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか?対象地域にお住まいの方は知っておきたいところです。
そこで今回は、耐火構造、準耐火構造、防火構造のそれぞれの違いや、火災の広がりを抑止するために重要なポジションである「屋根」の耐火構造についても解説していきます。
耐火構造とは?準耐火構造、防火構造との違い
「耐火構造」:建物の構造部分を燃えない構造にしたもの。
「準耐火構造」:耐火構造ほどの燃えない構造ではないものの、一定程度の燃えない構造にしたもの。
「防火構造」:外部で起きた火災に対して建物の内部に侵入させない構造したにもの。
「耐火構造、準耐火構造」は内部からの火災に対してのもので、「防火構造」は外部からの火災に対して一定の防火性能を備えた構造となります。
耐火構造
耐火構造の建物では、外壁や柱、床、屋根などそれぞれの部位ごとに最上階からの階数によって耐えられる時間が定められています。
通常の火災と内部からの火災によっても求められる性能は異なりますが、一般的な2階建てや3階建ての住宅では「間仕切り壁、外壁、柱、床、はり」に関しては1時間の耐久性が求められています。
「屋根」に関しては30分の耐久性が必要です。また、内部からの火災に関しては時間の制限がない箇所もあります。
準耐火構造
準耐火構造の建物では、耐火構造と同様にそれぞれの部位ごとに最上階からの階数によって耐えられる時間が定められています。
準耐火構造の建物に求められる耐久性は、「間仕切り壁、外壁、柱、床、はり」で45分です。「屋根や軒裏」などは耐火構造と同じ30分の耐久性が必要です。
防火構造
防火構造の対象となる建物の部位は、「外壁と軒裏」で火災が起きてから30分の耐久性が必要になります。
ただし、建築する地域によっても防火構造が必要な箇所は異なります。
屋根は30分耐火構造がポイント
屋根は建物の中でも、火災が燃え広がりやすい箇所となります。そのため、防火対策を考えるうえで重要な箇所といえます。
ここでは屋根の耐火構造について解説していきます。
屋根の耐火構造のポイント
耐火性能は、建物の部位ごとに最上からの階数によって所定時間が定められています。
「最上階や2~4の階」では1時間、「5~14の階」では2時間、「15以上の階」では3時間と求められる耐久性が高くなっています。
しかし「屋根や階段」に関しては階数にかかわらず30分の耐久性が必要で、屋根構造全体として耐火基準を満たす必要があります。
そのため「屋根材」に耐火認定のあるもの使用したり、「耐火野地板」を使用するなど部分的な性能だけでは満たすことができません。
屋根の30分耐火構造が必要な地域
「屋根の30分耐火構造」が必要な地域は、耐火建築物や準耐火建築物にしなければいけない地域となります。
(耐火建築物とは、耐火性能を備えた建物全体をさします)
防火地域と準防火地域
建物の防火性能についての規制がかかる地域に「防火地域」と「準防火地域」があります。
防火地域と準防火地域は都道府県が定める都市計画の中で定められています。防火地域と準防火地域の中では建物の大きさによって「耐火建築物」や「準耐火建築物」にする必要があります。
防火地域では、階数が3階以上または延べ床面積が100㎡を超える建物の場合には「耐火建築物」にする必要があります。
また、準防火地域では、地階を除く階数が4階または延べ床面積が1,500㎡を超える建物の場合には「耐火建築物」、500㎡を超え1,500㎡以下の建物の場合には「準耐火建築物」にしなければいけません。
法22条区域
上記以外の建物の場合では、使用する屋根材に不燃材料を使用する必要があります。
法22条区域(都道府県が定める防火地域や準防火地域以外の市街地)では、屋根を不燃材で造るか、不燃材(瓦・鉄)で葺くことが義務化されています。
まとめ
耐火構造、準耐火構造は内部からの火災に対してのもので、防火構造は外部からの火災に対して一定の防火性能を備えた構造という違いがあります。
基本的には耐火建築物(屋根30分耐火構造含む)にしなければいけない建物は住宅よりも公共施設や商業施設などの大きな建物がほとんどです。
一般的な住宅の場合には、防火地域内で建てる3階建てや延べ床面積が100㎡を超える住宅に限られます。その他には鉄筋コンクリート造などで住宅を希望している場合には、耐火構造について検討が必要になることもあります。
そのため、住宅においては、耐火構造よりも近隣で発生する火災に備えた防火構造を検討するケースが多くなります。一般住宅では耐火構造よりも防火性能を上げる工夫を検討した方が良いでしょう。