屋根カバー工法

 

屋根リフォームのひとつ「屋根カバー工法」があり、既存屋根の撤去作業が不要なため、コストを抑えられることが魅力の工法です。

しかし、屋根が二重になる分、「重量が増えて耐震性に影響が出ないか」心配している方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、屋根カバー工法による重量増加と耐震性について詳しくまとめました。屋根リフォームを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

屋根カバー工法による重量増加は耐震性に影響するのか?

躯体

 

結論から言うと、屋根カバー工法で耐震性に大きな影響をあたえることはありません

屋根カバー工法は既存屋根の上に新しい防水シートと屋根材をかぶせるため、確かに屋根の重量は増します。
しかし、あくまで建物が耐えられるほどの重量増加です。

屋根の重量がどれくらい増すのか、耐震評価はどう変化するのかを、以下で詳しく見ていきましょう。

 

屋根材別にみた重量増加の目安

新規屋根材張り

 

はじめに、屋根カバー工法でどれくらい屋根が重くなるのかを解説します。

屋根材にはいくつか種類があるため、新しくかぶせる屋根材によって増加する重量は異なります。

各屋根材の1平方メートルあたりの重量を見ていきましょう。

 

・ガルバリウム鋼板屋根:「5kg/㎡」

・自然石粒付屋根:「7kg/㎡」

・アスファルトシングル屋根:「9kg/㎡」

 

さらに、新しく敷設する防水シートの重さ「約1kg/㎡」が加わります。

最も軽い金属屋根を使用して屋根カバー工法を行った場合、1平方メートルあたり「約6kg増加」する計算になります。

100㎡の屋根では、「600kg」増える計算となり、軽自動車「約1台分」の重さです。

 

スレート屋根に金属屋根でカバー工法を行った場合の重量

 

例として、スレート屋根に金属屋根(ガルバリウム鋼板)をかぶせた場合、どれくらい屋根の重量が増すのかを見ていきましょう。

 

屋根材 重量(1平方メートル)
既存屋根(スレート) 20kg
新しい防水シート 1kg
新しい屋根(ガルバリウム鋼板) 5kg
合計 26kg

 

屋根カバー工法をおこなった際、1平方メートルあたりの総重量は「26kg」(野地板・既存防水シート含めず)ほどになります。

重そうに感じますが、1平方メートルあたり「60kg」もある瓦屋根と比べたら半分以下の重さしかありません。

もちろん、既存が瓦屋根とスレート屋根の家では「構造躯体の強度」が違うので、一概には言えませんが、建物全体で考えると「600kg」程度の重さが加わっても、耐震性に影響が出ることはないと言われています。

屋根の重さ・地震への影響について詳しくはこちら>>

 

屋根カバー工法による耐震評価の変化

建物診断

 

屋根カバー工法による重量増加は耐震性に影響が出るほどではありませんが、場合によっては「耐震評価点」が変化することもあります。

耐震評価点とは、震度6強~7程度の地震によって建物が倒壊する可能性を数値で表したものです。

必要耐力」(床面積・屋根の重さなどからの影響)に対して、「保有耐力」(柱・壁などの建物の強さ)がどれだけあるのかを計算し、以下のように点数が付けられます。

 

耐震評価点(木造住宅) 判定評価

1.5以上倒壊しない

1.0以上1.5未満:一応倒壊しない

0.7以上1.0未満倒壊する可能性がある

0.7未満倒壊する可能性が高い

 

必要耐力は建物の重量に比例して大きくなり、耐震評価が「1.0点」の場合は、必要耐力と保有耐力が同じ大きさであることを意味します。

この耐震評価点は柱や壁など建物の構造すべての保有耐力を合算したもので、細かい計算をたくさん行って算出します。

複雑な計算になるので説明は省きますが、もともとの保有耐力が低くない限り、屋根カバー工法を行っても耐震評価が1点以下になることはほとんどありません。

築30~40年以上雨漏りしている場合など、構造躯体が劣化してダメージを受けている状況下でなければ、あまり心配する必要なないと言えます。

 

屋根葺き替え工事でも重量が増える?

葺き替え工事

 

屋根カバーによる重量増加が気になる方は、屋根葺き替えを検討されると思いますが、実は新しい屋根材によっては葺き替え工事を行っても重量が増えてしまうため注意が必要です。

ただし、カバー工法との比較なので、「スレート屋根・トタン屋根」が対象となり、「瓦屋根」からの葺き替えは別とします。

 

葺き替え工事は野地板張りが必要になる

木下地張り

 

スレート屋根、トタン屋根を葺き替える際に必要となるのが「野地板張り(構造用合板)」です。

この構造用合板の重量は「8~10kg」とガルバリウム鋼板よりも重量があります。

屋根材を剥がすと、既存の野地板は傷むため、必ず必要となります。

もちろん、既存の野地板を剥がす、もしくは垂木に直接屋根材を取付ける方法もあります。

このどちらかを行えば、重量増加を防ぐことができます。

ですが、既存の野地板まで剥がすと予算がかかり、デメリットもあるため、あまり行われていません。

野地板について詳しくはこちら>>

また、垂木に直接固定する方法も「ガルバリウム鋼板(2960mm)」など、長さがある屋根材以外は、耐風性の影響から取付けが困難です。

スレート屋根(910mm)、アスファルトシングル(1038mm)」は垂木に約2~3箇所しか固定できないため、強風などで剥がるリスクがあるためです。

 

葺き替えた場合の屋根の重量

 

ガルバリウム鋼板に葺き替えた場合の屋根の総重量を、以下の表にまとめました。

施工前の重量:21kg(化粧スレート、防水シート)

葺き替え後の重量

各種工程 化粧スレート アスファルトシングル
新しい下地 (構造用合板) 8~10kg 8~10kg
新しい防水シート 1kg 1kg
新しい屋根材 20kg 9kg
合計 29~31kg 18kg~20kg
+8~10kg -1~3kg

 

化粧スレートから化粧スレートに葺き替えを行うと、構造用合板分の重さがプラスされる形となります。

化粧スレートからアスファルトシングルの葺き替えでは、マイナスにはなりますがほとんど差が無く、軽量屋根材の強みが薄れてしまいます。

このように、葺き替えを行うことで必ずしも屋根が軽くなるわけではなく、「化粧スレート・トタン屋根」の場合は屋根材によって重量がプラスになることもありますので、注意しておきましょう。

 

最後に

 

屋根カバー工法は屋根材が二重になる分、重量増加はどうしても避けられない工事です。

とはいえ、耐震性に大きな影響をあたえるほどの負担がかかるわけではありません。むしろ屋根材が二重になることで、断熱性や遮音性が高まり、雨漏りリスクも低減できます。

他にも、屋根葺き替えよりも施工費用が安く短い期間で工事が終えられるといった魅力もある工事です。

このように屋根カバー工法はさまざまなメリットがあります。

屋根リフォームをお考えの方は、選択肢のひとつとして屋根カバー工法も是非ご検討してみてください。