屋根塗装は、住まいの見た目を美しく保つだけでなく、屋根材の耐久性を延ばす大切な作業です。
ただ、屋根を見上げて屋根塗装をしたいと思いながらも「どのタイミングで塗装すべきなのか」、「塗料はどんな選べばいいか」などがよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「屋根塗装のメンテナンス時期や塗料選びのポイント、費用や施工手順について」詳しく解説します。
これから屋根塗装を行おうと検討している方はもちろん、屋根塗装の知識を身につけたい方もぜひ参考にしてください。
屋根塗装工事とは?その必要性について
屋根の代表的なメンテナンスと言えば「屋根塗装工事」ですが、その必要性についてあまり知られていません。ここでは美観を良くする以外の理由について解説します。
そもそも屋根塗装工事とは?
屋根塗装工事は、屋根材に塗料を塗って「屋根材を塗膜で保護」していく工事です。
屋根材に塗膜を施すことで、雨風・紫外線から屋根材を守り、耐久性を延ばす役割があります。一般的に塗装を行うサイクルは「10年ごと」で、屋根を保護するためにも定期的な施工が必要となります。
屋根メンテナンスの方法には「屋根塗装」、「屋根カバー工法」、「屋根葺き替え」と大きく分けて3つの方法がありますが、なかでも最もコストが低いのが「屋根塗装」です。
注意点として、悪くなった屋根材に塗装はできません。塗装はあくまでその素材が悪くならないようにするために行う工事です。そのため、悪くなってから塗装するのではなく、悪くなる前に塗装を行う事が重要となります。
屋根塗装工事の必要性とは?
屋根材は、毎日のように気候変動の影響を受け、年々そのダメージが積み重ねられていきます。
劣化が進むと、次第に屋根に「ひび割れや浮き」、「剥がれ」などが起こり、その隙間から雨水が浸入してきます。その状態が長く続くと、屋根材の下にある「防水紙も傷み」機能しなくなるため、「雨漏りを引き起こす原因」を作ってしまうのです。
屋根材が割れたり、防水紙が損傷した場合には、予算がかかる葺き替えなどの選択肢しか残されていません。比較的に低予算で屋根材を持たせていくには、この定期的な屋根塗装工事が必要となります。
【屋根材別】メンテナンスの時期の目安は?
日々「紫外線や風雨、雪」の影響を受けている屋根は、定期的なメンテナンスを行わなければいけません。
しかし、すべての屋根材が同じように劣化するわけではないため、屋根材の種類ごとに特製やメンテナンスの時期、メンテナンス方法をおさえておくことが大事です。
ここでは、スレート(コロニアル)屋根、ガルバリウム鋼板屋根、トタン屋根、セメント瓦など、代表的な屋根材について解説します。
スレート(コロニアル)屋根
スレート(コロニアル)屋根は、セメントを材料にした屋根材で、現在の住宅によく使われています。スレート屋根はだいたい7年前後から色褪せや塗装の剥がれが見られます。
屋根塗装は「7~10年」程度の時期が目安です。また、屋根素材自体の耐用年数は「30年」ほどなので、その頃には全体の葺き替えリフォームの検討時期となります。
ガルバリウム鋼板屋根
ガルバリウム鋼板は金属製の屋根のひとつで「アルミニウムや亜鉛」などでメッキされているため、ほかの金属屋根よりも「錆びにくい」という特徴があります。屋根材自体は大体「30〜40年」の耐用年数ですが、約20年目くらいで色あせがするため、塗装が必要となってきます。
ただし海沿いの建物では、海からの潮風の影響を受けるため、塗膜の劣化が進みやすく錆びも進行しやすいです。そのため塩害地域の場合は、他よりも早めの塗装が必要となります。
トタン屋根
トタン屋根は、昔からある鉄系の屋根材のため、耐久性が劣ります。錆が発生しやすく、塗装してもすぐに剥がれてくるため定期的な塗装がかかせません。
その耐用年数はおおよそ「20~30年」程度で、塗装は「5〜8年」の間隔でメンテナンスが必要となります。
セメント瓦
セメント瓦は、セメントを主成分とした屋根材です。陶器瓦と比較すると割れやすく、耐久性に劣るため定期的な塗装によるメンテナンスが必要となります。
表面の塗装は「10年~15年」ごとが推奨され、耐用年数は「30年~40年」くらいとなります。
ただし、現在では生産中止となっており、割れたり破損してしまうと同じ瓦で修理できません。板金などで補修を行うか、どこかで在庫をみつける必要があり、状況によっては「葺き替え工事」が必要となります。
屋根塗装で使用される塗料の種類について
屋根塗装では、さまざまな種類の塗料が使われています。塗料の種類(グレード)によって特徴や耐用年数に違いがあり、「どの塗料を選ぶか」で家の耐久性や快適性が大きく変わります。
ここでは、塗料のグレードごとの特徴、遮熱塗料の詳しい特性、人気の塗料の色について詳しく見ていきましょう。
塗料のグレード
まずは、塗料の種類「グレード」についてです。代表的な塗料のグレードをご紹介します。
ウレタン
ウレタン塗料は、さまざまな塗料の種類のなかでも、安く入手できる塗料です。柔軟性のあるウレタン樹脂が主な成分で「伸縮性」や「密着性」に優れ、外壁はもちろん、付帯部(破風・雨樋など)で使用されることが多いです。
ただ、紫外線による劣化の影響を受けやすく、耐用年数はおおよそ「8~10年」くらいと短めです。
シリコン
シリコン樹脂を原料とした「シリコン塗料」は、数ある塗料のなかでも価格、寿命のバランスがちょうどよい位置づけで人気がある塗料です。熱や水に強く、撥水性をももっているため、屋根や外壁の塗料としてはメリットがあります。
塗膜の硬さや弾性の低さから、ひび割れリスクもありますが、しっかりした工程で塗装すれば安心です。
耐用年数はおよそ「10~12年」くらいです。
ラジカル
塗料を劣化させる「ラジカル」という因子の発生をおさえる機能を持ったものが「ラジカル制御塗料」です。耐久性により雨風・太陽の刺激からも劣化をおさえられるほか、低汚染性により汚れがつきづらい特徴があります。
現在、もっとも人気がでている塗料で耐用年数は「15年」前後と言われています。
フッ素
さまざまな塗料のうち、耐久性や耐候性の高さから注目されているのが「フッ素塗料」です。価格はやや高めですが、その分、耐用年数も長めで「15~20年」くらいと言われています。
紫外線に強いので、色褪せやチョーキング現象も起きづらいのも特徴です。特に太陽の熱があたりやすい屋根塗装ではおすすめできる塗料と言えるでしょう。
無機
一般的な塗料は有機物を成分としていますが、これに対して無機物を配合したものを「無機塗料(ハイブリッド塗料)」と言います。石や陶器、ガラスといった“半永久的”なものを混ぜて作る塗料なので、かなり高耐久です。
紫外線、雨、風による影響も受けづらい無機塗料は、屋根塗装で注目されています。価格的には高いですが、耐用年数は長めで「18~25年」くらいと言われています。
夏でも涼しい遮熱塗料
「遮熱塗料」は、日光の熱を強力に反射し、建築物の素材の温度を低減する効果がある塗料です。近年の夏は、真夏日、猛暑日とも言える気温が続き、屋根や外壁の塗料に遮熱効果を求める方も増えています。
遮熱塗料を建物に塗ると、熱を反射して素材自体の温度が下がるため、結果的に建物内部が高温状態になることを防ぎます。エアコンの効果も高まり、居住者にとって快適な環境が生まれます。
適用の事例としては、遮熱塗料を一度塗った屋根の表面温度が約10.5℃下降し、さらに室内の温度も約3℃低下するという報告があります。
ただ、実際は断熱材工事と比べるとあくまで塗料での対策のため、室内の体感温度が大幅に変わったと実感しづらいのが現状です。
屋根の色の選び方は?
屋根塗料の色選びでは「外壁色と調和できる色合い」がポイントとなります。
基本的には「外壁よりも屋根の方が濃い色」を選ぶと、上下のバランスが取れた外観となります。また、既存の屋根材の色が「ブラック」であれば、そのまま「ブラック」を選定するという方法でも良いでしょう。
よく選ばれる色としては「ブラック」や「ブラウン」、「グレー」といった濃いめの色から「グリーン」や「レッド」も多くみられます。屋根の色は外壁の色が基準となりやすいため、外壁の色をベースに全体観をみて選んでいく形となります。
色選びで迷われる方は、カラーシュミレーションの活用や近所の建物を見て回って選定されるのもおすすめです。
屋根塗装の費用はどれくらいかかるのか?
塗装工事の費用は、塗装範囲と使われる塗料の種類によって変わります。以下に示す表は、面積別の塗装工事の相場です。参考にしてください。
施工内容別の単価
工事内容 | 費用単価 |
高圧洗浄 | ¥25000円~ |
下地調整費・養生費 | ¥15000円~ |
タスペーサー(化粧スレートのみ) | ¥300円/㎡~ |
下塗り・中塗り・上塗り(計3回塗り) | ¥1500円/㎡~ |
塗料グレード別の単価
塗料の種類 | m2当たりの単価 | 30坪の住宅での総費用 | 耐用年数 |
アクリル塗料 | 1,500~1,800円 | 18~21万円 | 5年 |
ウレタン塗料 | 1,800~2,200円 | 21~26万円 | 7年 |
シリコン塗料 | 2,800~3,100円 | 33~37万円 | 9年 |
ラジカル塗料 | 3,200~4,000円 | 38~48万円 | 12年 |
フッ素塗料 | 4,200~4,500円 | 50~54万円 | 15~17年 |
光触媒塗料 | 4,200~5,000円 | 50~60万円 | 15~17年 |
30坪の住宅での総費用:上記+高圧洗浄、養生、下地調整、管理費なども含めた総費用(目安)
屋根塗装費用が変わる要因
屋根塗装の費用は「屋根材の種類」、「下地の劣化状況」、「縁切りの必要性」、「屋根勾配」によっても変わります。
■屋根材の種類
金属系よりもセメント系の塗装の方が、屋根材の吸い込みがあるため、手間がかかり材料費もかかります。
■下地調整
前回塗装での施工不良や劣化により「旧塗膜」が残っていると、ケレン作業に手間がかかります。
■屋根勾配
急勾配での作業の場合、屋根足場が必要になったり、作業に手間がかかります。
作業に時間を要するとその分「人件費」がかかります。また、材料費、そして屋根足場も状況によって別途必要となり費用単価に影響します。
屋根塗装の施工の手順について
■屋根塗装工事の流れ(30坪くらいの戸建ての場合)
作業内容 | 所要日数 |
近隣挨拶 | 1日(約1〜2時間) |
足場の設置 | 1日 |
洗浄(高圧洗浄) | 半日~1日 |
下地調整、養生 | 半日~1日 |
縁切り(タスペーサー) | 半日 |
下塗り、中塗り | 1日 |
中塗り、上塗り | 1日 |
完了確認 | 1日(約1時間) |
足場の解体 | 1日 |
屋根塗装工事の一般的な工事の流れは上記の通りとなります。
所要時間は「屋根材の種類」、「屋根の面積」、「劣化状況」、「施工時期(季節)」によって変わります。
また、タスペーサーはスレート屋根材限定の作業となります。
屋根塗装でのDIYがおすすめできない理由
DIYのメリットは、人件費を大幅に削減できる点かと思います。
しかし、DIYでの屋根塗装はデメリットも大きいです。その点について解説します。
品質低下につながる
DIYでの塗装は、ちゃんとした知識を持って施工しないと、すぐに塗膜が剥がれてきて、すぐに再塗装が必要になることも。屋根塗装はただ塗るだけではなく、ちゃんとした工程を進める必要があります。
まずその屋根材及び劣化状況に適した「塗料の選定」、次に「下地調整、タスペーサー、養生」、「塗布量、乾燥時間、配分」なども意識して施工を行う必要があります。
また、屋根材が損傷していれば、塗装だけではなく「屋根修理が必要」なケースもあり、素人では対処できず、プロの技術が必要です。
危険が伴う
屋根塗装は高所作業のため危険が伴ます。施工中に落下するリスク、塗料を飛散させて近隣トラブルになるリスクも考えられます。
また、慣れない高所作業のため、身体を壊してしまうリスクもあります。費用を節約するために行ったDIYが、本業に影響を与えてしまってはまったく意味がありません。
そのほか、屋根材は割れやすく、足で踏んで割ってしまい状況を悪化させてしまうリスクもあります。
基本的に4寸勾配以上は、必ず専門業者に依頼しましょう。
最後に
ここでは、屋根塗装についての基本的な知識から、それぞれの屋根材に応じたメンテナンス時期の目安、塗装費用などについて詳しく説明しました。
屋根塗装は、屋根の耐久性を延ばし、美観を保つための重要な作業です。適切な塗料を選び、メンテナンスのタイミングを把握することで、屋根材も長持ちします。
年数経ち、劣化が進んでいる場合は早めに屋根塗装工事を検討していきましょう。
実際に工事を行う場合は、DIYでなく、専門業者への依頼がおすすめです。簡単にはみえますが、それなりの知識と技術が必要となります。
DIYで作業してすぐに塗装が剥がれたり、身体を壊してしまったらそれは後悔に変わってしまいます。屋根塗装工事は、プロに依頼して間違いない工事を行っていきましょう。
屋根塗装工事NAVI