瓦屋根の点検を依頼すると、「瓦桟(かわらざん)が腐食してるため、交換が必要です」といわれることもあります。
そして、実際に見積もりを行うと、明細書に「瓦桟(かわらざん)の撤去や新設」という文字が記載されますがこの瓦桟はとは一体何を表しているのでしょうか?
ここでは、瓦屋根にとって必要な「瓦桟」について解説していきます。
瓦桟ってなに?
「瓦桟」は、またの名を「桟木(さんぎ)」とも呼ばれます。
この瓦桟は、瓦を屋根に固定するために敷かれる「細長い木材」のことです。
屋根の下地である野地板に、横線を描くように敷かれるのが一般的ですが、風の強い地方の場合は、瓦をしっかり固定するために、縦線でも瓦桟が敷かれます。
ちなみに瓦でないもの、例えば「スレート屋根」や「ガルバリウム鋼板」の場合は、瓦桟を敷く必要はありません。
瓦桟の役割とは?
瓦を固定するため
瓦桟の役割は、前述したように、瓦をしっかりと屋根に固定することです。
瓦をただ並べただけでは、ずり落ちてしまいますし、ましてや強風が吹く地域ではなおさらしっかりと瓦を固定しなければならないので、瓦桟を設置します。
雨水の侵入を防ぐ
瓦桟のもう一つの役割は、瓦を正しく設置することで、内部への雨水の侵入を防ぐことです。
正しく設置できていないと、隙間から雨水が入り込みやすく防水シートの劣化を早めてしまいます。
瓦桟の施工方法
瓦桟は、野地板の上に防水シートを張り、その上に取付けていきます。
一般的には瓦桟は横に敷かれるのみですが、その場合、水はけが悪くなり、水が滞留してしまいます。
水が滞留したところから、瓦桟や野地板などが腐食してしまうので、横並びのみの瓦桟の場合は、瓦桟に水の排出口である「ウォーターホール」と呼ばれる隙間を空けて対策を取ります。
この他にも、縦に走る板(「きずり」若しくは「流し桟」)を瓦桟の下に敷いて、水が下に流れ出やすくなる方法も取られています。
ですが、この「きずりや流し桟」による施工方法は従来よりも時間がかかるというデメリットがあります。
瓦桟の材質種類
従来の瓦桟は木材が一般的でしたが、木材は施工の時に折れてしまったり、反りや曲がりがあったりして、使いにくいものが多くありました。
また、腐食による劣化も早いため、木材の瓦桟は少なくなってきています。
木材の瓦桟の代わりに登場したのが、「合成樹脂性のエコランバー瓦桟」です。
エコランバー瓦桟は、品質が一定で、腐食に強い性質があります。
また反りや曲がりもないために、施工しやすいというメリットもあります。
最近では、「高耐久通気樹脂瓦桟」も出回っており、こちらは最初から換気穴がついているので、流し桟を敷く必要がないというメリットがあります。
瓦桟が腐食するとどうなる?
瓦桟の材質は良いものが増えてきてはいますが、まだほとんどが「木材」です。
木材なので年数が経つと傷み、腐食してしまうと「瓦がずれたり、割れたり」します。
屋根にこのような状態が現れてしまうと、雨水が侵入しやすくなりますから、屋内への雨漏りリスクが高まります。
もちろん二次防水材である屋根ルーフィングシート(防水シート)が施されているはずですが、屋根がダメージを受けてしまうと、屋根ルーフイングも何かしらの悪影響を受けやすくなってしまうので、結果的に雨漏りの原因になってしまいます。
屋根なんて、めったに目にすることはないですが、ちょっとでも屋根に異常がないかどうか、定期的にメンテナンスを行っておくことをおすすめします。
瓦桟の修理方法
腐食した瓦桟をそのまま放置してしまうと、瓦がずれ落ちて下に落下してしまうこともあります。
そのため、瓦桟に不具合が生じてきたら早めの修理がおすすめです。
瓦桟の補修・交換
費用を安くあげるのであれば、傷んでる箇所だけ瓦を剥がして部分的に交換して補修することもできます。
ですが、瓦桟が傷んでいるという事は、防水シートもそれなりに劣化しています。
また、他の瓦桟も傷んでいるケースがほとんどなので、できれば下記の「瓦葺き直し」がおすすめです。
瓦の葺き直し
瓦の葺き直しは、瓦を一度解体してから、新しく「野地板、防水シート、瓦桟」を取付けて、また瓦をもとに戻してく工事内容です。
屋根は古くなると、全体的に下地は劣化します。
瓦桟だけ劣化しているというケースは少ないので、築30年以上でしたらこの「屋根葺き直し工事」をおすすめ致します。
屋根葺き替え
屋根葺き直しよりも予算は掛かってしまいますが、思い切って「屋根葺き替え」を行ってしまうのも選択肢の一つだと思います。
既存の瓦を解体処分して、「野地板、防水シート」を取付けた後、新しい屋根材「金属・シングル材・軽量瓦」などを葺いていく工事です。
この場合は、桟木の取付けは行いません。
葺き替えのメリットは、屋根が軽くなるので、耐震性に優れるという点です。
まとめ
瓦桟は耳慣れない言葉ですが、瓦を支えたり、雨水の侵入を防いだりなど、大きな役割を果たしています。
目に見えない部材ですが、瓦桟が働いてくれるおかげで、瓦屋根を維持できているのです。
最近では従来の木材の瓦桟に代わって、合成樹脂製の高耐久瓦桟が登場していますから、耐久性も上がってきています。
修理を行うのであれば、「補修」よりも「葺き直し」や「葺き替え」をご検討してみてください。