軒天上

 

軒天(のきてん)とは屋根が外壁よりはねだしている部分の天井を指します。

このはねだしは、屋根の裏側(天井)部分から宅内に雨が侵入しない為や、屋根下地が露出しない為の美観性の維持といった理由で仕上げられております。

軒天はベニヤ板や、ケイカル板など様々な建材が使用されることがあり、それらにより仕上げやメンテナンス方法や時期が異なります。

ここでは軒天に使用される様々な建材の種類とその特徴・メンテナンス方法について説明していきます。

軒天材の種類とその特徴

ベニヤ板

軒天ベニヤ

 

築年数の古い住宅に多く使用されている建材がベニヤ板です。

厚みのあるベニヤ板だと重量が重たくなってしまう為、軒天に使用されるのは3~5mm程度のベニヤ板が一般的です。

価格が非常に安価ですが、耐水性、耐火性が低い建材です。

ベニヤ板のまま仕上げてしまうと水分を吸収してカビが生えたり、腐食をしてしまう為、塗装で仕上げるのが一般的です。

使用する塗料は屋根や外壁に使用する塗料と同様で、主にシリコン系、ウレタン系が使用されます。

また経年で表面の塗膜がペリペリと剥がれてしまい、防水性、美観性が低下する為、定期的に塗装メンテナンスを行う必要があります

 

有孔ベニヤ板

軒天有効ベニヤ

 

有孔ベニヤ板とは、ベニヤ板に定期的なピッチで小さい穴が開けられたベニヤ板です。

天井裏の通気性を確保する為に軒天材として使用される建材です。

使用方法としては、軒天全てを有孔ベニヤ板にするのではなく、屋根の四つ角のみ有孔ベニヤ板にするといった部分的な使用が一般的です。

ベニヤ板同様、シリコン系、ウレタン系の塗装で仕上げており、定期的な塗装メンテナンスが必要な建材です。

 

プリント合板

 

プリント合板とはベニヤ板にプリントシートを貼り仕上げられた建材で、化粧板と呼ばれることもあります。

仕上げとして貼られるシートは、シナやヒノキなど意匠性のある木目プリントが多く、意匠性が目的とされております。

またプリントシートで仕上げることで、塗装を行わずに防水対策を行うことも出来ます。

ベニヤ板とプリントシートは接着剤で接着されている為、経年劣化により接着力が低下し、剥がれてしまいます。

プリントシートのみ貼り変えるのは難しく、プリント合板ごと張り替えるといったメンテナンス方法が一般的です。

 

ケイカル板

軒天ケイカル

 

ケイカル板とはケイ酸質、消石灰、補強繊維が主原料となった合成建材です。

現在では軒天に使用される最もスタンダードな建材なだけでなく、住宅の様々な場所に使用されています。

ケイカル板の特徴

①不燃性がある

石膏ボードと同様で不燃建築材料として認定されており、軒天の使用に適しております。

②耐水性に優れている

同じ不燃建築材料である石膏ボードは耐水性がありませんが、ケイカル板は耐水性にも優れている為、水廻りや外回りに使用する建材として非常に適しております。

③価格

不燃性、耐水性から非常に優れた建材の為、高価な建材と思われることが多いですが、ベニヤ板1枚約600円に対し、ケイカル板1枚約750円と大きな金額差はありません。(1枚910mm×1820mm)

④割れることがある

ケイカル板はベニヤ板と違い様々な素材を合成して作られた合成建材の為、衝撃が加わることで割れる恐れがあります。割れてしまった場合は、部分的に張り替えるといった対応を行う必要があります。

ケイカル板もベニヤ板同様、仕上げに塗装を行います。

また、ベニヤほど必要ありませんが、定期的に塗装を行った方が長持ちします。

ケイカル板にもベニヤ同様に、「有孔ケイカル板」もある為、軒天に使用することで通気性の確保も行うことが出来ます。

 

スラグ石膏板

スラグ石膏

出典:アスノン

 

スラグ石膏板とは鉱物、石膏を混ぜて作られた合成建材で、エクセルボードとも呼ばれます。

ケイカル板、石膏ボード同様で不燃建築材料として認知されております。

ケイカル板より安価で、施工性が良いことから軒天に使用されることが多い建材ですが、耐水性が無いという特徴もあります。

ベニヤ板やケイカル板同様、シリコン系、ウレタン系の塗料で塗装メンテナンスを行う必要があります。

 

フレキシブルボード

フレキシブルボード

出典:チヨダセラフレキ

 

フレキシブルボードとはセメント、補強繊維を混ぜて作られた合成建材で、スレート、セメント板と呼ばれることもあります。

セメントが原料の為、不燃性があるだけでなく、衝撃や湿気に強いという高耐久性を持つ建材です。

しかいケイカル板の2倍程の価格、重量が比較的重たいといった点から、軒天に使用されることはあまり多くありません。

フレキシブルボードも塗装にて仕上げられており、シリコン系、ウレタン系の塗料で塗装メンテナンスを行う必要があります。

 

金属板

軒天金属板

 

軒天には木材や合成建材だけでなく、金属板が使用されることがあります。

軒天に金属板が使用さる場合、ガルバリウム鋼鈑やアルミスパンドレルが使用されます。

金属板は耐火性、耐水性、耐久性に優れ、非常に優秀な建材ですが、意匠性や施工単価の高さから、一般住宅に使用されることは少なく、デザイン住宅や病院など公共施設に使用されることが多い建材です。

また金属板も劣化すると錆が発生するため、25年前後で塗装によるメンテナンスが必要です。

シリコン系、ウレタン系の塗装に加え、錆止め塗料を施工する必要があります。

 

その他

ケラバ用ヒップアンドリッヂ取付け

 

軒天には様々な建材が使用されますが、その殆どが塗装による仕上げとなります。

しかし中には塗装以外の仕上げ方も存在します。その代表がモルタル仕上げです。

モルタルとは砂、水、セメントを練り合わせて作る建築材料です。

外壁がモルタル仕上げの住宅の場合、軒天も外壁と続けてモルタルで仕上げるという場合があります。

その場合、モルタルの下地になるのは主にベニヤ板やラスカット板などの木材となります。

モルタルは経年劣化でヒビが入ったり、色褪せたりします。

その為、塗装による定期的なメンテナンスが必要になります。塗料は一般的にシリコン系、ウレタン系が使用されます。

 

軒天の塗装によるメンテナンスについて

軒天塗装

 

軒天は様々な建材、仕上げで造られておりますが、その殆どが塗装によるメンテナンスが必要です。

軒天の塗装は主に3つの工程があります。

 

① 下地処理

 

下地が痛んでいる場合は塗装が出来ない為、割れや反りを直したりします。

金属板の場合はケレン処理を行うこともあります。

 

② 下塗り

 

主剤を下地に接着させるため、プライマーなどの下塗りを行います。

 

③ 中塗り

 

シリコン系、ウレタン系の主剤を塗布

 

④ 上塗り

 

中塗りの乾燥後、再度主剤を塗布します。

このように正しい手順で塗装を行わないと、軒天材にしっかりと塗膜が付着しない恐れがあります。

 

まとめ

 

軒天材には木材以外にも様々な建材が使用されております。

その中でも近年では、ケイカル板が主に使用されています。

軒天のメンテナンスをお考えの方は、塗装の場合は「使用塗料や時期の確認」、張替えの場合は「新しい軒天材の種類をしっかりと把握」して適切な材料でメンテナンスを行っていきましょう。