屋根塗装は費用も掛かるため、DIYでできないかと考える方も多いでしょう。
確かに施工方法さえわかれば、DIYでも可能です。
しかし、屋根での作業は危険が伴いますし、適切な作業をしないと施工不良にも繋がります。また屋根の状態によっては塗装しない方が良いケースもあります。
このように屋根塗装を行う場合は、きちんとした基礎知識がないと失敗してしまうため注意が必要です。
そこで今回は、屋根塗装をDIYで行う前に確認するポイントや安全に行うための対策について解説していきます。
屋根塗装をDIYで行う前に確認しておきたいポイント
屋根塗装をDIYで行う前に確認しておきたいポイントは、「既存の屋根の状況」を確認することです。ここでは、屋根塗装を行う前に確認しておきたい屋根の状況について解説していきます。
パミール、コロニアルNEOなどの商品ではないか
スレート屋根の場合には「パミールやコロニアルNEO」などの商品が使われていないかを確認する必要があります。
「パミール」は1996年から2008年までニチハで販売されていたスレート屋根です。「コロニアルNEO」は2001年に現ケイミューから発売されたスレート屋根で、パミールと同様にアスベストを含まない屋根材として戸建て住宅に使われていました。
どちらの商品も経年劣化によって強度が著しく低下することで、塗装などのメンテンナスを行うことができません。パミールの劣化の特徴は、元々1枚のスレート屋根が何枚もの層に分かれてしまう症状が見られ、コロニアルNEOの場合には大きな欠けや屋根全体にひび割れが発生します。
屋根塗装をDIYで行う場合には、これらの症状が発生していないかを確認する必要があります。
塗装ができる屋根の状態か
屋根が塗装のできる状態かどうかを確認することも重要です。
屋根は経年劣化によって日々傷んでいきます。長い間劣化した状態で放置された場合には、屋根材の強度が低下していることもあります。
塗装によるメンテナンスをするには、屋根材自体の強度が確保されている必要があります。屋根全体に「ひび割れ」や「欠け」が見られる状態や、「屋根材のズレ」が多い場合には塗装以外の方法でメンテナンスを検討した方が良いでしょう。
雨漏りしていないか
屋根塗装をDIYで行う前には、雨漏りしていないかの確認も必要です。
雨漏りしている箇所がある場合には、屋根塗装を行っても根本的な改善にはなりません。理由として、雨漏りしているということは2次防水のルーフィングシートが破損しているため、屋根の表面だけ塗装をしても意味がないからです。
雨が降ると、1次防水の屋根材の裏側に雨水もまわります。2次防水が破損しているとそのまま建物に侵入してしまうので、雨漏り箇所の修理を最優先することが大事です。
棟など屋根以外の劣化の確認
屋根塗装を行う際には、屋根材の塗装以外にもメンテナンスが必要な箇所があります。
スレート屋根の頂上付近にあたる棟などには、板金が施工されています。その棟板金は経年劣化によって「錆び」や「浮き」、「固定している釘の浮き」などが起こります。
屋根材だけ塗装してもこれら板金材も一緒に修理しないと不具合の原因となります。棟やケラバなどの板金が施工されている部分の劣化状況も確認しておく必要があります。
屋根塗装をDIYで行う流れ
屋根塗装をDIYで行うためには、適切な流れに沿って作業を進めていく必要があります。ここでは屋根塗装をDIYで行うための施工の流れについて解説していきます。
安全対策の確認
屋根塗装をDIYで行うためには、一番最初に安全対策を確認することが大事です。高所での作業となる屋根塗装を、安全にDIYでするためには欠かせないポイントがいくつかあります。
足場の設置
屋根塗装を行う場合には基本的に「足場の設置」が必要です。梯子での作業はとても危険なため、DIYではおすすめできません。プロでも、平屋の塗装か屋根の状態が良く(滑りにくい)、3寸勾配以下などの場合に稀に行うくらいです。
足場の設置は、専門の足場業者による設置が必要で、足場の組立て等作業主任者などの資格を持った職人が施工します。足場の設置には費用がかかってしまいますが、安全対策のために欠かせない工程になります。
落下防止対策
高所での塗装作業となるので、落下防止対策も欠かせません。ヘルメットや滑りにくい足袋靴、安全帯、フルハーネスなどさまざまな道具を使って落下防止の対策を行います。
住宅の高さや足場の設置状況によっては、安全帯やフルハーネスを使うことが義務づけられています。安全帯やフルハーネスはあまり聞きなれない道具ですが、足場と自分の体をつなぐ命綱のような道具です。
足場に固定するフックの取り付け方にも注意点などがあるため、使用する前には使い方も一通り理解しておく必要があります。
屋根勾配の確認
屋根塗装をDIYで行う場合には、屋根勾配の確認も大事です。屋根は雨などを流す為に傾斜をつけて設置されています。
DIYで行う場合には最大でも「4寸勾配まで」を推奨します。(もちろん足場あっての場合です)
「4寸勾配」とは、水平方向に10m進んだ場合に垂直に4m上がる傾斜のことです。一般的な住宅の屋根は4寸から5寸勾配が多く、6寸勾配となると塗装業者であっても屋根専用の足場が必要になる勾配です。
屋根塗装で必要な道具の準備
屋根塗装をDIYで行うには、必要な道具をすべて揃える必要があります。
安全対策用
ルメットや滑りにくい靴、安全帯やフルハーネスなどの他にも汚れても良い作業服、手袋など
養生、下地調整用
高圧洗浄機、マスカーやテープ、カワスキやカッター、ブルーシートなど
塗装作業用
塗装に使用する塗料、塗料を入れるバケットに内容器や塗料をこすネット、ローラーや刷毛など
ローラーや刷毛にもさまざまな種類がありますが、使用する塗料が水性か油性かによっても異なります。またローラーの大きさや毛足の長さによって作業の効率も変わります。
道具の準備はDIYで行う屋根塗装の最終的な仕上がりにとっても重要です。
実際の作業の流れ
屋根塗装をDIYで行う実際の流れを紹介します。
高圧洗浄
経年劣化によって傷んでしまった屋根材の古い塗膜や、汚れやほこりを高圧洗浄で綺麗にします。北側や日当たりの悪い屋根では、古い塗膜や汚れなどの他にも苔や藻が発生していることがあります。
苔や藻は高圧洗浄でしっかりと除去しておくことが必要で、洗浄が不十分な場合には、塗膜がすぐに剥がれてしまうなどの不具合に繋がります。
養生
ローラーを使った屋根塗装では、塗料が飛散しやすいです。
屋根形状や状況によって、屋根以外に塗料が付着しないように養生を行います。また、足場のメッシュ養生以外にも近隣対策として養生を行うこともあります。
下地処理
高圧洗浄で綺麗になった屋根は、経年劣化や屋根の上で作業したことでひび割れや欠けが見られます。軽微なひび割れや欠けの場合には、コーキングを使って補修をする必要があります。
また高圧洗浄で落としきれなかった汚れや苔、藻などもカワスキなどを使って丁寧に除去することが大事です。
下塗り
下地処理で行ったコーキングが完全に硬化してから下塗り塗装を行います。
下塗りは、屋根の劣化状況や屋根材に合わせて、塗料を選定することが大事です。屋根材は、スレート(コロニアル)、金属、モニエル瓦など、様々な屋根材がありますが、それぞれ専用の下塗り材があります。
実際の施工では、ムラなく仕上げるため、状況によって下塗りの回数を増やすなどの現場での判断も重要になります。
中塗り
下塗りで均一になった屋根全体に中塗り塗装を行います。中塗りと上塗りでは同じ塗料を使用することが一般的です。
中塗りの工程では、塗り残しが無いように細かな部分へのダメ込みなどに注意しながら作業を行います。また塗りムラを避けるために、下塗り塗装とつなぎ目をずらして塗装することが大事です。
上塗り
中塗り塗料が完全に硬化してから、上塗り塗装を行います。
中塗りと同じ塗料を使うことが多いため、塗り残しには注意が必要です。同じ塗料を使っているため、塗料が乾燥してしまうと、つなぎ目も分からなくなってしまいます。
さらに屋根塗装は頂上付近から徐々に軒先へと下がりながら塗装していきます。上塗り塗装を行った後の屋根には、基本的に登ることができませんので下からのぞき込むようにして、重なり部分などの塗り残しを無くすことが大事です。
縁切り(タスペーサー)
スレート屋根などを塗装する場合には、タスペーサーなどを使って縁切り作業を行う必要があります。縁切りとは、屋根材の重なり部分に部材を差し込んで、上下の塗膜を離して隙間を作る作業です。
この縁切りを行わないと、毛細管現象などによって屋根材の裏側に水分が入り込んでしまうことがあります。そのまま放置してしまうと、屋根からの雨漏りにつながる可能性があるため注意が必要です。
屋根塗装におすすめの塗料は?
屋根は外壁に比べて雨風の影響を受けやすいため、経年劣化が進みやすい環境にあります。そのため、塗料の選定はとても重要です。
ここでは、屋根塗装におすすめの塗料を屋根材別に紹介していきます。
塗料のグレード
塗料のグレードには、アクリル塗料、ウレタン塗料、シリコン塗料、フッ素塗料といったグレードがあります。
グレードが高い塗料の方が耐用年数が高くなりますが、施工費用も高くなる傾向にあります。ただし、耐久性が求められる屋根の塗装には、シリコン塗料やフッ素塗料などの耐用年数が高い塗料がおすすめです。
屋根材別の適正塗料
屋根材別におすすめの塗料を紹介していきます。
コロニアル屋根材
■シリコン塗料
日本ペイントのファインシリコンベスト
エスケー化研のヤネフレッシュシリコン
■フッ素塗料
日本ペイントのファイン4ベスト
エスケー化研のヤネフレッシュフッソ
■遮熱塗料
日本ペイントのサーモアイシリーズ
エスケー化研のクールタイトシリーズ
セメント瓦、モニエル瓦
■シリコン塗料
水谷ペイントの水系ナノシリコン
■フッ素塗料
水谷ペイントの水系パワーフロン
金属屋根材
■シリコン塗料
日本ペイントのファインルーフSi
■フッ素塗料
デュフロン4Fルーフ
※金属屋根材は表面温度が高温になるので、塗料のグレード以外にも遮熱塗料の使用もおすすめです。
シングル屋根材
■シリコン塗料
日本ペイントの水性シリコンベストⅡ
エスケー化研の水性ヤネフレッシュシリコン
水谷ペイントの水系カスタムシリコン
水系ナノシリコン
■フッ素塗料
エスケー化研の水性ヤネフレッシュフッソ
水谷ペイントの水系パワーフロン
屋根塗装をDIYでするメリット・デメリット
屋根塗装をDIYで行う場合には、もちろんメリット・デメリットがあります。どちらも理解した上で、DIYで作業を行うかどうかを決めていきましょう。
ここでは、DIYで作業した場合のメリット、デメリットについてご紹介していきます。
メリット
屋根塗装をDIYでするメリットは主に費用を抑えられることと、工事の時期を自由に決められることです。
費用を抑えられる
屋根塗装にかかる費用は、屋根の面積や使用する塗料のグレードによって代わりますが「30万~50万前後」です。足場の設置費用も含まれているため、屋根塗装だけでも高額な工事になります。
しかし、DIYで屋根塗装を行うことで費用を抑えることができます。屋根塗装にかかる費用は、職人に支払う人件費が大きな割合を占めています。DIYで屋根塗装を行うことで「10~30万円」ほどの人件費を抑えることが可能です。
工事の時期を決められる
屋根塗装に限らず、DIYで塗装を行う場合には自分のタイミングで工事の時期を決めることができます。
業者に屋根塗装を依頼する場合には、塗装業者や足場業者などさまざまな職人のタイミングを考慮して作業することになります。
そのため、施工業者の都合を合わせる必要がありますが、DIYでは足場以外はすべて自分の都合次第となります。
屋根塗装をDIYでするデメリット
屋根塗装をDIYでするデメリットは、塗装の耐久性や仕上がりが悪くなることです。さらに落下の危険性などによるリスクもありますし、近隣トラブルに発展する可能性もあります。
耐久性が低くなる
屋根塗装をDIYですることで、塗膜の耐久性が低くなることがあります。
屋根塗装をするには多くの工程がありますが、どの工程も丁寧に作業することで塗料の性能を十分に発揮することが可能です。実際にケレン作業、均一に塗布する、塗料の希釈率の調整などの経験が求められます。
このような経験の差から塗膜の耐久性は低くなることがあります。
仕上がりが悪くなる
屋根塗装をDIYですることは可能ですが、職人が行うような仕上がりになることはありません。
塗料を均一に塗布することや、塗り残しなく仕上げるには豊富な経験が必要です。また養生の良し悪しによって最終的な仕上がりも変わります。
落下の危険性などにリスク
屋根塗装をDIYでする最大のリスクが、落下の危険性があることです。
経験豊富な職人であっても、屋根塗装の最中に滑ってしまうなどのリスクはつきものです。不慣れな屋根の上での作業では、特にその危険性が増してしまいます。
また、不慣れな作業から足腰を傷めてしまう事も多いです。作業後は私生活に影響を及ぼしてしまいます。
近隣トラブルの可能性がある
屋根塗装は高所で作業をするため、近隣へ塗料が飛散することがあります。
足場に張られた飛散防止ネットはありますが、ローラーの使い方などによって塗料の飛散は多くなります。また建物以外にもカーポートや車などへの塗料の飛散がトラブルになることもあります。
屋根材が割れるリスクがある
屋根材の性質や構造についての知識が少ないために、屋根材が割れてしまうリスクがあります。
屋根材には乗ってもいい場所がありますが、DIYで屋根塗装をする方にはあまり知られていません。そのため屋根塗装をしたことで、屋根材が割れてしまうということもあります。
屋根の劣化状況の判断が難しい
屋根塗装をDIYでする場合には、屋根の劣化状況の判断が難しく塗装後の不具合につながることがあります。
劣化が酷く塗装できない場合もありますが、状況から判断するには豊富な経験や屋根材に関する知識も必要になります。
まとめ
屋根塗装をDIYすることはできます。
しかしながら、塗装の有無や既存の屋根材の種類や劣化状況に合わせた塗装方法と塗料の選択は簡単ではありません。間違った方法で塗装することで、早期の塗膜の剥がれや雨漏りを引き起こしてしまうことにもつながります。
そのためDIYでの作業に少しでも不安がある方は、専門の業者への依頼がおすすめです。費用は掛かりますが、間違った選択を選ぶことが無く、安全に品質の良い仕上がりとなります。
屋根塗装を行う際は、慎重に検討してからどちらで施工を行うか選んでいきましょう。