お住まいに雨樋があるとは知っているものの、ふだんあまり気にして見ていない方も多いのではないでしょうか。それだけに、いざ雨樋が壊れていると不安になるかと思います。
「割れた雨樋を放置しても大丈夫?」と修理の必要性に迷っている方や、「雨樋修理の費用が分からなく修理をためらっている」と費用面が気になる方もいるかもしれません。
今回は、雨樋の目的や壊れる理由とともに、雨樋修理にまつわる費用のことや方法などを詳しくお伝えしていきます。
雨樋とは?部材別の名称や素材について
屋根から流れる雨水を地上にスムーズに伝わるように、屋根・外壁の周りに横向きや縦向きに設置されている設備を雨樋(あまどい)と言います。
雨水を正常に流すために、建物にとってなくてはならない部材となります。
設置箇所別の名称
雨樋は総名称で、取付ける位置によって細かい部材の名称が異なります。
・「横樋(軒樋)」屋根の端に沿うように横向き(地面から見て水平)に取付ける雨樋
・「竪樋(縦樋)」屋根から見て縦向き(地面から見て垂直)に取付ける雨樋
・「集水器(上合)」横樋と竪樋を繋ぐ部材
そのほか、「止まり」「曲がり」「ソケット」「継手」「エルボ」「吊り金具」などの部材から構成されています。
素材にも違い
リーズナブルな塩化ビニールは一般的によく使われている素材です。そのほか、耐久性の高い合成樹脂製やガルバリウム製、ステンレス、銅製などもあります。
また、形状もいくつかあり、昔からポピュラーなのは「半円型」ですが、最近はお洒落で受ける水量が多い「角型」も選ばれるようになりました。
こんな症状には注意!雨樋の不具合・壊れる要因とは
次に、雨樋の不具合や注意したい症状について、壊れる要因とともに見ていきましょう。
ゴミが溜まる
ゴミが溜まることで雨水の流れが遮られ、雨樋に不具合がでる原因になることがあります。正しく排水できないばかりか、溢れた水が外壁を伝って汚します。
ほかの箇所に影響することもあるので、ゴミを取り除く掃除をして雨樋の排水を正しく復活させてあげましょう。
また、落ち葉止めのネットがついた雨樋もなど、落ち葉対策ができる雨樋もあります。
経年劣化によるひび割れ、破損が起こっている
雨の日は水が流れ、晴れた日には紫外線を受け続けるので、雨樋は経年劣化が進んでひび割れや破損を起こします。
雨が降ったときに外周をチェックし、雨水の漏れがあればひび割れや破損が起こっている可能性が高いです。
素材やお住まいの状況によって一概に言えませんが、だいたい20年を過ぎた頃には雨樋の寿命です。雨樋に変色がでて硬化していると、交換が必要となるサインです。
接続部分が外れた、緩んでいる
雨樋はすべて一体化しているわけではなく、軒樋や竪樋などのジョイントによりつないで構成されています。
施工の際の接着の弱さが原因で接続部分が外れたり、負荷がかかり過ぎて外れることもあります。
次第に隙間ができて雨水が漏れるため、接着剤などを使った補修や部分交換など状況に応じた修理が必要です。
雨樋の金具が錆びている
雨樋を固定しているのは、吊り金具や受け金具と言われる「金具」です。しかし、金具は紫外線や雨による錆びで固定力が弱まり、雨樋本体の歪みや外れて落下することもあります。
また、金属の錆びは雨や風と共に、周辺の外壁・屋根へと広げる性質があります。これを「もらい錆」と言いますが、金属素材の外壁だけでなく、モルタルや窯業系サイディングなどにも錆を付着させるので厄介です。
錆が出ないように塗装や錆が進行したら交換が必要となります。
自然災害での割れや歪み
台風や強風などで雨樋が外れることや、飛来した何かが当たって破損することもあります。
雪が多い地域の場合、雪による雨樋破損に注意が必要です。屋根に積もる雪は重く、屋根から滑り落ちるとき雨樋に負荷がかかって破損するケースも実は多いです。
自然災害での破損は広範囲になることが多いため、部分交換よりも広範囲の交換が必要になるケースが多いです。
雨樋の傷みを放置するとどうなる?
雨樋の傷みを見つけたとき、「とりあえず様子を見よう」と放置する方も多いようです。ただ、放置することによって別の問題も引き起こすので注意しなければなりません。
滝のように雨水が流れ落ち騒音被害
雨樋に割れや穴があいたままでは、破損部分から直接雨水が落ちます。大きな音とともにまるで滝のように地面をたたきつけます。
隣家との距離が近い場合、隣の敷地に水がはねて迷惑をかけることもあるでしょう。
外壁が傷みやすくなる
雨樋には、屋根からの雨水が外壁を伝って落ちるのを防ぐ目的もあります。しかし、雨樋が破損すると外壁にあたる雨水も増えるため、結果的に外壁の劣化につながるでしょう。
雨漏りが起こる可能性
雨樋が壊れただけでは、雨漏りが起こる直接的な原因にはなりません。ただ、外壁の傷みを促進するため、建物の寿命が縮む可能性もあります。
また、普段の雨では入らないような隙間に雨水が入り込んで雨漏りしてしまうケースも稀にあるため注意が必要です。
雨樋修理の工程
雨樋修理には、「既存の雨樋に補修だけを行う方法」、「既存の雨樋を取り外し、新たな雨樋へと交換する方法」の2つの方法があります。
まずは、雨樋修理についてそれぞれの工程を見ていきましょう。
補修
ひび割れや穴、隙間など軽微な症状なら、コーキング材・接着剤を使って部分的な補修ができます。
コーキング・防水テープ張り
ひび割れ、穴あきには、コーキングや防水テープを張って対応します。
まずは、水分やゴミが残っているとコーキング材やテープがうまく付かないので、周辺のゴミを取り除きます。
次にコーキング材や防水テープを張り割れや穴を塞ぎ完了です。
ただ、コーキングやテープによる修理はあくまで応急処置という意味合いが強い補修となります。
接着剤
継手や集水器、止まりなど、雨樋をつなぐときに使う部材の接着面が弱くなったときは、隙間から水が溢れてくることがあります。新たな接着剤がしっかり密着するように、古い接着剤を除去・掃除をします。
水分が残っていないことを確認し、接着剤を塗り、雨樋と部材をしっかりと固定していきます。
交換
雨樋の歪みや割れ、破損などの場合、新しい雨樋に交換します。
①劣化した雨樋の解体
破損している雨樋を撤去します。固定金具も同じく傷んでいるケースが多いので、その後取り外します。
外壁に固定した穴があいたときは、コーキング材を充填することで雨水の浸入の防止の役割があります。
②新しい雨樋の取付け
新しい金具と新しい雨樋を取付けていきます。
かつての雨樋と言えば釘での固定も多かったですが、緩んで抜ける恐れもありました。そこで、新しい金具の取り付けはビスの方が安心です。
今後の寿命を考えて「劣化しづらい・耐用年数の長い素材」の雨樋や金具を選ぶのもおすすめです。
同じ品番の雨樋があれば、部分的に雨樋の交換も可能となります。
雨樋修理・交換の費用はどれくらい?
雨樋の不具合について、なるべく早く対応したいと思いつつも、やはり気になるのは費用ですよね。
雨樋の傷みの状態で修理方法の選択肢が変わることはもちろん、一部だけでよいか・広範囲の修理になるかという修繕範囲次第で費用も大きく異なります。
部分的な補修・交換の場合
雨樋の傷みが少なく、部分的に対応できる補修や交換の場合、「1.5~5万円くらい」の費用が目安です。
コーキングやテープ補修で「1.5万円~」くらい、部分交換で「3~5万円」くらいとなります。
部分的な交換では、主に「作業費」がメインでかかります。そのほか、「補修箇所(1階2階など)」、「m数」や「雨樋製品の種類、角型・丸型」などによって費用単価が変わります。
雨樋を全交換する場合
雨樋が全体的に劣化している場合は、全交換がおすすです。
■交換費用の単価
横樋「3000円/m~」、竪樋「3000円/m~」、集水器「2300円/箇所~」
雨樋交換は、建物の形状によって材料の量が変わってくるほか、素材や品番によっても費用は異なります。
仮設足場にも費用がかかる
部分的な補修であれば、場所によっては「梯子」での作業が可能です。ただ、作業位置的に難しい部分、安全の確保がしづら場所は仮設足場が必要とります。
建物の規模や状況で足場費用は変わりますが「650円/㎡」が平均となり、部分足場で「8万円~」、20坪の建物でおおよそ「10万円~」となります。
雨樋修理費用を少しでも抑える方法は?
雨樋修理費用をおさえるポイントをいくつかご紹介します。
屋根修理専門業者に依頼する
雨樋修理は、屋根修理業者が専門としている工事内容です。屋根修理を行う際に雨樋はどうしても絡みがあり、適切な排水処理が必要となるためです。
雨樋交換を依頼できる施工店は「ハスメーカー」、「リフォーム会社」、「塗装会社」などたくさんあります。
ですが、実際に施工するのは屋根職人となるため、雨樋だけを依頼するのであれば直接施工できる屋根修理業者がおすすめです。
直接依頼することで、相場よりも安く施工できる可能性が高くなります。
見積もりを比較する
相見積もりをとるのも費用をおさえるコツです。何社か見積もることで、同じ工事でも安く工事を引き受けてくれる業者に出会えます。
ただし、安すぎる業者も注意が必要ですので、相場よりも少し安く地元の安心できる業者がおすすめです。
外壁塗装などと一緒に施工する
仮設足場をともなう雨樋修理・交換なら、外壁塗装や屋根塗装と一緒の施工がおすすめです。
仮設足場の費用を外装のメンテナンスのたびに何度もかけると総合的に大きな費用となります。
近いうちに外壁・屋根塗装の時期なのであれば、今回の1回分の足場費用で、外装全体のメンテナンスができます。まとめてやるとコストカットにつながるでしょう。
雨樋修理は火災保険が使える?
火災保険で雨樋修理ができると耳にしたことがある方も多いかもしれません。
結論からお伝えすると、火災保険で雨樋修理は行えます。ただ、すべてのケースで火災保険が使えるわけではありません。
まず、補償の対象は「風災や雪災、水災、雹災」といった自然災害での損害です。つまり、経年劣化でいつの間にかひび割れが起こっていたというケースでは火災保険は使えません。
また加入している条件や保険内容によって受けられる補償は変わってきます。
【一般的な補償条件】
・雨樋の破損被害から2~3年以内の申し込み
・自然災害によるひがいであること
・20万円以上の雨樋修理
加入している保険会社によって内容は異なります。ご自身の保険内容を詳しくチェックする、もしくは電話等で確認することが大事です。
雨樋修理のDIYをおすすめできない理由
コーキングや接着剤、雨樋の部材などは市販されているのでDIYで簡単に施工できると思われがちです。しかし、DIYでの施工はあまりおすすめできません。
高所の作業は大変危険
まず、雨樋補修は高所作業で大変危険だからです。
DIYの場合、足場を組まずにハシゴを使っての作業となるかもしれません。しかし、道具や部材を持ってハシゴ上るだけでも大変なうえ、そこで補修作業するとなると安定せずバランスを崩しやすいものです。
もしDIYするなら、地上から手の届く1階部の範囲だけの補修にとどめましょう。
しっかり補修できない可能性がある
DIYでは、状況にあった適切な補修ができない可能性もあります。
ダメージがひどいほど本来補修には手間がかかるものです。DIYでも見た目は補修できたように感じるかもしれませんが、雨が降って雨水が流れると不具合が再び起こるケースもあります。
また、雨樋が歪んでいた場合には勾配等の修正も必要です。直したつもりがオーバーフロー(雨漏れ)が起こり改善されていないこともあります。
最後に
雨樋は屋根で受けた雨水がボタボタと地上に垂れてくるのを防ぐ役物です。外壁や基礎への浸水をおさえ、陰ながら住まいを守ってくれる存在です。
雨樋の破損を放置すると、騒音や外壁の傷み、雨漏りを引き起こす原因にもなります。劣化に気づいたら早めの修理がおすすです。
雨樋は状況別に補修や交換が行えます。劣化状況をみて、部分交換や全交換を選択して適切な修理を行っていきましょう。
雨樋交換工事NAVI