ベランダの手すりや陸屋根のパラペットの頂部の防水役物のことを「笠木(かさぎ)」と言います。
この笠木ですが、経年劣化によって雨漏りが発生しやすい箇所となり、定期的な修理が必要となります。
笠木の修理方法として、「笠木交換」、「笠木カバー」の2つがあります。それぞれ特徴があり、違いがあるため施工方法で悩まれる方も多いです。
そこで、ここでは笠木交換と笠木カバーそれぞれの施工方法や特徴、費用について解説していきます。
笠木交換、笠木カバーの違い
笠木交換と笠木カバーの違いは、既存の笠木の処理方法による違いです。
笠木交換・・既存の笠木を解体、撤去した後で新しい笠木を取り付けます。
笠木カバー・・既存の笠木はそのままの状態で新しい笠木を上から被せる工法です。
雨漏りなどの不具合の状況や下地の劣化状況によって施工方法を選択することが大事です。
笠木の材質
笠木の材質はガルバリウム鋼板や鉄、アルミなどが一般的です。
鉄製の笠木の場合にはガルバリウム鋼板を使った笠木カバーが可能ですが、アルミの笠木の場合には笠木交換することでメンテナンスを行います。
アルミの笠木の場合は形状に厚みがあるためカバーができません。
劣化状況
笠木の劣化原因は「接手からの雨水の侵入」、「下部の水切りからの雨水侵入」、「結露」などです。
長期間で雨水が浸入し続けると、下地の木材が腐食して留め釘が外れて、笠木の剥がれや雨漏りにつながります。
また笠木が取付けられている外壁の内部で発生する結露によって、下地が劣化することがあります。
笠木部分は劣化を確認することが難しく、軒天や外壁材の雨漏りによる雨染みや腐食から判明するケースが多いです。
笠木交換の特徴
笠木交換は鉄製の笠木の下地が劣化してしまった場合やアルミ製の笠木を交換する場合に行います。
新しく設置する笠木にはより経年劣化の少ないガルバリウム鋼板を使用したり、アルミ製の笠木を使用するのがおすすめです。
メリットとデメリット
メリット
・下地の劣化状況を把握して修復することが可能です。笠木の交換をすることで下地から新しい部材に取り換えることができます
・既存の笠木を利用しないので材質の変更や雨仕舞の方法など、さまざまな対策が講じやすくなります。
デメリット
・既存の笠木の解体や撤去、処分費など工事にかかる費用の増加や工期が長くなります。
笠木交換の施工手順
笠木交換の施工手順について解説していきます。
既存笠木の撤去
笠木交換を行うには、まず既存の笠木を解体撤去していきます。
基本的には笠木板金とその下地のみの解体となりますが、さらに外壁材や躯体部の劣化状況によっては広範囲にわたる解体が必要になることもあります。現場の状況に合わせて臨機応変に対応することが大事となります。
下地調整
劣化状況に合わせて下地調整を行います。天板の木材の取り換えや木材の変わりにケイカル板や樹脂材などの下地に変更することも可能です。
外壁材の下地まで劣化が進行している場合には、胴縁や束の交換なども検討する必要があります。
ルーフィング張り
下地材の上に防水処理としてルーフィング張りを行います。防水シートの継ぎ目などもしっかりと防水処理をする必要があります。
笠木取付け
新しく使用する笠木に合わせた役物や笠木本体の取付を行います。笠木の継ぎ目などがある場合にはコーキング処理なども合わせて行います。
笠木交換の費用
笠木交換の費用は1mあたり「約1万円~」です。使用する笠木の種類や下地の劣化状況、笠木の幅やm数によっても異なります。
笠木カバーの特徴
笠木カバーは既存の笠木が鉄製の場合に行うメンテナンス方法です。アルミ笠木の補修としては行えません。笠木カバーで使用するのはガルバリウム鋼板が一般的です。
メリットとデメリット
メリット
・下地の交換を行わないため費用を抑えたメンテナンスが可能なことです。
・下地調整なども容易なことから費用や工期を抑えたい場合に適しています。
デメリット
・下地の劣化状況を正確に把握することができないことです。
外壁内部の結露などによる下地材の劣化は、外観から判断することが難しいです。下地が腐食した状態で笠木カバーを行ってしまった場合、不具合が発生する可能性があります。
笠木カバーの施工手順
笠木カバー施工手順を解説していきます。
下地調整
既存の笠木の上にコーキングを塗り、下地に劣化がある場合は下地材として木材や樹脂材などを取付けます。
ルーフィング張り
下地材の上に防水処理としてルーフィング張りを行います。(カバーの場合は防水シートの有無や張る順番が状況により変わることがあります)
防水シートの継ぎ目などもしっかりと防水処理をする必要があります。
笠木取付け
既存の笠木と下地材を覆うように新しい笠木を取り付けます。笠木の継ぎ目にはコーキングを充填して処理します。
笠木カバーの費用
笠木カバーの費用は1mあたり「約5千円~」です。笠木の幅や下地の状況によっても費用が変わります。
笠木交換、笠木カバーの必要性
ベランダの修理を行はないと、下記の症状があらわれます。
・木下地の腐食
・外壁材の剥がれ、浮き、ひび割れ
・躯体の腐食
・室内への雨漏り
・シロアリの発生
・ベランダなどの腐食による倒壊
笠木からの雨水の侵入などによる木材の腐食は、メンテナンスを行わない限り劣化が進んでしまいます。
バルコニー周りの木材の腐食だけでなく重要な梁や柱の劣化にもつながり、湿気を含んだ木材ではシロアリ発生の恐れもあります。
このようなことを防ぐためにも早めの「笠木交換や笠木カバー」が必要となるのです。
最後に
笠木交換は下地から新しくやり直す工事で、笠木カバーは、既存の板金材を残したままその上から新しい笠木を重ねて仕上げていく施工方法となります。
それぞれメリット、デメリットがあり、施工の有無も変わってきます。
現状の笠木の状況をしっかりと調査した上で、適切な施工方法を検討していきましょう。