昔は瓦屋根を採用していた一戸建てが多かったものの、近年はスレート屋根が多く用いられています。
また、軽い金属屋根も注目を集めている屋根材ですが、スレート屋根や金属屋根に欠かせないのが「棟板金(むねばんきん)」です。
この棟板金は年数が経つと、固定している釘が浮いて、不具合を生じさせます。
実は、この不具合が原因で、台風シーズンになると大変なことになってしまうことをご存知でしょうか?
ここでは、その棟板金の釘浮きの原因や修理方法について解説していきます。
棟板金とは?
まず棟板金とは、スレート屋根や金属屋根で用いられている、「屋根が交差する部分(棟)」に取付ける金属板のことです。
屋根材に「木下地(貫き板)」を取付けて、その木下地に「棟包み(金属板)」を被せて仕上げてあります。
陸屋根と呼ばれる平たい屋根でない限り、必ず屋根には棟部と呼ばれる屋根が交差する部位が存在します。
瓦屋根の場合は棟部に棟瓦が葺かれているのですが、スレート屋根や金属屋根で用いられるのが棟板金です。
棟部に何もないと、そのまま雨が建物の中に入ってきてしまうため、棟板金は屋根の中でも非常に大事な部位です。
棟板金の釘が浮く原因は?
経年劣化で、棟板金の釘が浮いてしまいますが、主な原因は以下の3つとなります。
風の影響
棟板金は、風の影響を強く受ける部位のため、長年に渡って風を受け続けると風圧によって釘が浮く、あるいは抜けるといった症状が出る場合があります。
気温変化の影響
棟板金の素材は金属板のため、気温の影響を受けやすく、暖かい時には膨らみ、寒いと縮む性質を持っているのです。
もちろん、寒暖差が激しい場所であってもすぐに影響が出るわけではありませんが、何年もそのような僅かな膨らみ、縮みを繰り返していると徐々に釘が緩くなります。
木下地が腐食した影響
棟板金の下には木下地があるのですが、この木下地が腐ることも釘浮きを引き起こす要因です。
木下地は、棟板金の継ぎ目や、屋根材との取合いから雨水が入り込むことで、徐々に腐食してきます。
腐食することで、釘が緩んで釘浮きの原因となってしまうのです。
釘浮きが原因で起きる被害とは?
棟板金に使用されている釘は、下からでは見えづらいため、浮いていても放置してしまう方も多いと思います。
しかし、釘浮きを放置してしまうと、さまざまな2次被害が発生してしまうため、注意が必要です。
木下地(貫板)が腐食する
釘が浮くということは穴が空いているとも言い換えられ、その穴(隙間)から雨が侵入することで木下地の劣化が進む恐れがあります。
雨は木材を腐らせる原因であり、板金の内部に使われている木下地が腐ってしまうと強度は保たれません。
この貫板が腐っていないとしても、釘浮きを放置していると棟板金の強度に問題が発生してしまいます。
棟板金が剥がれる
本来、釘で固定されていたものが緩むと、強風などにより強い力が加わった場合に棟板金そのものの歪みを引き起こすことがあるので危険です。
強風時では、棟板金が剥がれて落下することも数多くあり、台風シーズンでは甚大な被害が出ています。
雨漏りの原因となる
棟板金の下には、防水シートが張ってあります。
棟板金内部に雨水が入り込みやすくなると、この防水シートも劣化してしまいます。
防水シートが劣化して破れてしまうと、そのまま建物内部に雨水が入り込み、雨漏りしてしまいます。
棟板金の釘浮きを修理する方法
年数が経過すると、釘が浮いてしまうのは仕方ありません。
それでは、釘が浮いてしまった場合には、どにように修理した方がよいのでしょうか?
釘補修
まず、浮いている釘をそのままハンマーで打ち込む修理方法がありますが、すでに浮いている釘を元通りにしても以前ほど機能はしてくれません。
そのため、太めの釘で打ち直すか、ビス打ちで補強するなど釘の状態をカバーするような修理方法を用いるのが基本です。
棟板金の交換
次に、先に書いたような木下地、貫板など内部に問題がある場合、釘そのものをどうにかするのではなく「棟板金自体を交換」することも検討してください。
釘を取り替えたとしても内部の劣化は元には戻らないため、木下地や棟板金そのものの劣化を単純な応急処置で対応するのは難しいのが実情です。
環境にもよるものの、10年前後で釘が浮く症状が出始め、20年ほどで木下地の腐食が進行してきます。
釘が浮くだけならば棟板金はそのままで対応できるものの、20年前後の時間が経過しており棟板金や内部に問題がある場合は、棟板金そのものの交換も検討したいところです。
まとめ
屋根全体にも言えることですが、棟板金も時間が経過すれば徐々に劣化してきます。
風の影響、そして寒暖差の影響でどうしても釘は浮いてくるため、それを放置しないことが重要です。
釘の浮きをそのままにしておくと、最悪は木下地の腐食が進行し、2次被害も発生してしまいます。
できれば、築10年目で「釘補修」を行い、築20年以上では「棟板金の交換」がおすすめです。
さらに、今では木下地を使用せず、樹脂製のものや金属製の下地材も使用しています。
棟板金を交換するのであれば、下地の種類にもこだわってご検討してみてください。