庇(ひさし)は雨や紫外線から建物を守る大切な役割があります。
しかし、屋根や外壁と比べると狭い範囲のため、その重要性や劣化しても傷みに気づかなかった、修理をするタイミングが掴めないという方も多いのではないでしょうか。
「庇を修理したいけれどどんな方法がある?」「修理費用はどのくらいかかるか知りたい」という方に向けて、ここでは庇修理について詳しくお伝えします。
※庇にも「アルミ製」や「鉄骨」などの種類がありますが、一般的な戸建てにある「下地が木材で構成された庇の修理」についてご紹介しています。
7.最後に
庇の持つ役割について
まずは、庇(ひさし)について役割や種類を見ていきましょう。
庇とはどこを指す?
庇は、霧除け(きりよけ)とも言われている箇所で、玄関や窓、裏口などの上部に取り付けられた小さな屋根のことを指します。
「軒」と間違われやすいかもしれません。軒は屋根の延長となっていますが、庇は「窓の上」や「玄関の上」など庇は部分的に外壁から出っ張っているイメージです。
庇の役割
庇のおかげで、玄関や窓に雨が入りにくくなるうえ、日除けにもなります。特に、夏場には庇の日除け効果は大きいです。窓の上の庇のおかげで屋内への直射日光を軽減でき、「家具やカーテンの色あせをおさえられる」「エアコンの効きをよくする」といった効果もあります。
また、庇があることで、庇の直下の窓・外壁汚れを防ぐのも庇の役割と言えるでしょう。
庇の種類・素材の違い
庇の下地は木材で構成され、仕上げに「ラワン材」、「ケイカル板」、「モルタル吹付け」など、雨を受ける上部は「板金材」で仕上げられています。
築年数の古い家で見られる庇の種類と言えば、ラワンとトタン仕上げとなっており、腐食や錆やすくこまめなメンテナンス必要とされてきました。それ以降では、ケイカル板とガルバリウム鋼板仕上げが多く、塗装を定期的に行うだけで長期間持ちます。
ただ近年では、「庇が無いお宅」や「アルミ製の庇」も増えたことから、そもそも庇のメンテナンスが不要なケースも増えています。
庇の板金修理が必要な劣化状況について
庇は、主に上部の板金部(トタン)の劣化により、さまざまな不具合が生じてきます。次のような症状があれば、修理が必要なタイミングがきています。
庇の板金材に錆がでている
表面を保護していた板金材の塗膜が劣化すると錆が発生します。錆は思いのほか周囲に広がりやすく、庇だけでなく、外壁にもらい錆としてうつしてしまうリスクもあります。
また、庇全体に錆が広がると、次第に「穴あき」、「破損」と状況が悪化することも。ほんの少しの錆だとしても、早めに庇修理をしておくと安心です。
庇の板金材に穴があいた
錆びの状況が悪化して、庇に穴があいてしまった場合は早急に対処しましょう。
穴が空いてから日数が経っていると、下地も傷んでいるかもしれません。放置期間が続くと内部の下地が腐食して庇の歪みや板金の剥がれ、崩壊などにもつながります。
庇にひび割れや雨染みが発生している
モルタル吹付けの庇の場合は、モルタル部にひび割れやカビ・雨染みが発生している場合は早めに修理をしたい症状です。
ひび割れの隙間から雨水が入り込み内部を傷めます。また、雨染みはひび割れや板金部から内部に雨水がまわっている可能性があります。
放置しているとどんどん下地の腐食まで進行します。そのままでは落下するリスクもあるため注意しましょう。
板金部分の外れや剥がれ
庇の仕上げ材の板金がパカパカと浮くような症状があらわれたら注意が必要です。
板金材の浮きは、釘が下地にしっかりと効いていないとでてきます。そのままでは強風時に板金材が剥がれ飛んでしまうこともあります。
また、釘が効かない原因として、木下地の腐食が考えられますので、下地の修理も必要となります。
庇板金の劣化を放置した場合のリスクとは
庇の板金材に劣化を見つけても規模が小さく、建物全体に対する影響度も少ないと感じ、「修理した方がいいかどうしようか」と様子見にしてしまう方もいるかもしれません。でも、劣化を放置したことにより、次のようなリスクも考えられます。
屋内に起こる雨漏り
庇板金が劣化すると、庇と外壁の取合いや板金材の継ぎ目から雨水が入り込むリスクが高まります。
雨水が入り込むと、湿気や腐食など、外壁内部の躯体や断熱材に影響がでてしまいます。
庇が自然災害で被害を受ける
修理が必要な状況であるにもかかわらず放置していると、台風や強風、大雪などの自然災害によって庇がより被害を受ける可能性があります。例えば、少しの板金材の剥がれが突風によって完全に剥がれ飛んでしまったり、歪んだ庇が積雪による重量を受けて崩壊してしまうなどです。
大きな破損となる前に劣化サインがあったら早めに修理をおすすめします。
庇の修理方法について
庇の修理方法は何種類かあり、劣化状況によってその施工方法も変わってきます。ここから、劣化した庇の全体的な修理方法について解説していきます。
塗装を行う
金属部の錆や色あせ、化粧板の塗膜の剥がれは「塗装」で対応ができます。庇の素材に穴や破損、腐食、剥がれ、めくれなど大きな破損がない場合に選べる方法です。
錆が発生している場合は「ケレン」という作業で表面を磨いて錆落としは可能です。錆や汚れを落とした後には錆止めを塗布。その後、表面を保護するための塗料を施していきます。
塗装は、屋根や外壁塗装と同じで、下塗りをして中塗りを行ってから仕上げ塗りと3度塗りをすることで正しい塗装に仕上がります。だいたい化粧板含めトタンは「5年前後」、ガルバリウム鋼板は「10年」ほどを目安に塗装していくことがおすすめします。
板金カバー工法
古い庇の素材を覆うように、新たな板金を覆って取付るのがカバー工法です。塗装では対応できないケースに選ばれます。
既存の化粧板にはそのままガルバリウム鋼板を巻き、板金部には構造用合板とその上に防水シートを張り、ガルバリウム鋼板で仕上げます。
カバー工法は、下地の垂木などに大きな腐食がないときに選べる工法です。
板金・下地の張替え、全体的な交換
板金部分の傷みがひどく、下地が腐食している場合には全体的な交換が推奨されます。
板金部分を撤去して、野地板や垂木などを交換して新しく庇を造り直していきます。
また、庇を新しく別素材に交換することもできます。既存の庇を解体して、外壁の張替えを行い、新しいアルミなどの一式商品化されている庇を取付けていきます。
どちらも、庇を新しくすることができますが、それなりに予算がかかってしまいます。
庇の修理費用はどれくらい?
庇の修理は下記の項目によっておおまかに費用が変わります。
・現在の劣化状況による施工方法の選択
・施工範囲または箇所
・新しい素材は何を選ぶか
・撤去した部材の処分費用
・仮設足場の有無
「塗装」:15000円/箇所(単体)、「板金カバー」:35000円/箇所~、「全交換」:60000円/箇所~
庇の修理は、単体よりも外壁塗装などとセットや複数箇所でまとめて行われることが多いです。その場合は、まとめることで費用が抑えられるケースもあります。
単体工事の場合は、2階作業の庇の修理は足場のコストも加わることになります。
庇修理の費用を抑える方法
庇全体の劣化やダメージがひどいほど修理費用はかかります。足場が必要ともなれば、少しでも費用をおさえられる方法があれば利用したいものですよね。
次に、安くおさえられるポイントについて見ていきましょう。
火災保険を使う
もし、台風や暴風、落雪、豪雨がきっかけで庇が破損したのであれば、火災保険の風災補償を使えるかもしれません。火災保険は“火”による被害だけではなく、風災や水災、雪災などの被害でも対象となることが多いです。
ただ、保険会社やご自身の契約状況によって詳細は異なるため、申請に関する詳しい情報は保険会社に詳しく聞いてみましょう。
また、申請時には被害写真を添付することになるため、被害直後にはしっかりと写真を撮っておくことが大事です。(被害写真は依頼業者が撮影してくれます)
見積もりを比較する
庇の工事は、業者によって修理内容と費用が異なります。高い業者もいれば安い業者もいるため、比較することが大事です。
だからといって極端に安すぎる業者にも注意が必要です。
見積もりの比較は費用をおさえるのに効果がありますが、「見積もり時の点検は丁寧だったか」「見積書に分かりにくい点がないか」「説明がしっかりしていて安心感があるか」なども比較しましょう。
他の工事と一緒にまとめて行う
庇の修理に足場をかけなければならないケースがあります。せっかく足場をかけるなら、外壁や屋根の工事とまとめて行うのもおすすめです。
たとえば、庇の錆が経年劣化でひどくなってくる頃は、外壁や屋根の塗装タイミングと同時期というケースも多いです。1年ごと、数年ごとに何度も足場をかけて工事を行っていると割高となります。
庇の修理をするときは、まとめて施工することで総合的にメンテナンス費用をおさえられるでしょう。
最後に
庇は、日除けや雨除けの役割があって、お住まいにとって大事な箇所です。
しかし、ふだんは目立たない存在なため、いざ劣化が起こっても修理をすべきかどうかタイミングが掴めない方もいるかもしれません。
ただ、庇上部にある板金材のちょっとした錆や穴を放置してしまった結果、屋内への雨漏りと繋がる可能性もあります。
剥がれや破損など大きなダメージでなくとも、傷んでいると感じたらなるべく早く点検をして庇修理を検討しましょう。
また、修理内容や足場の必要性でも修理費用が違ってきます。特に、足場をかけて修理をするときは、修理費用をおさえるためにも屋根や外壁などのメンテナンスも一緒に行うのがおすすめです。