屋根の葺き直しとは、既存の屋根材を再利用して葺き直す工事です。葺き直しをすることで下地劣化のメンテナンスや葺き替えと比べて費用を抑えることにもつながります。
そんな葺き直し工事ですがどれくらいの予算でできるのでしょうか?ここでは屋根葺き直し工事の費用について解説していきます。
屋根葺き直しでの作業工程別の単価は?
既存屋根材の撤去
既存の屋根材の解体、撤去を行います。下地の桟木や漆喰などは処分して、瓦材だけ残していきます。
野地板などの劣化状況によっては下地の解体、撤去も行います。また解体した既存の屋根材を再利用するため、ひび割れや欠けなどに細心の注意を払って作業を行います。
屋根材の解体費用:「¥1500~2500円/㎡」
野地板の解体処分費用:「¥700~1000円/㎡」
木下地張り
既存の野地板を解体した場合には垂木に新しい野地板を取付けます。既存の野地板を解体していない場合には増張りして対応します。
木下地張り費用「¥2500~4000円/㎡」
防水シート張り
木下地の上に防水シート張りを行います。防水シートには屋根ルーフィングシートを使用します。メーカーやグレードによって耐久性や透湿性、遮熱性などの性能に差があります。
防水シート張り費用「¥600~1200円/㎡」
屋根材の葺き直し
既存の屋根材の葺き直しを行います。防水シート張りを行った後で再利用する屋根材に合わせて瓦桟の取付などを行います。
屋根材の葺き直し費用「¥5000~8000円/㎡」
各種役物の取り付け
屋根材の葺き直しの工程の際に各種役物の取り付けを行います。
既存の屋根材に合わせた棟瓦や土居のし、面戸漆喰の施工も行います。軒先面戸には漆喰を使用するケースもありますが軒先水切りやプラスチック面戸などの専用部材を取り付けることもあります。
棟瓦施工費用(漆喰含む)「¥8000~10000円/m」
仮設足場の設置・各種諸経費
屋根の葺き直し工事では必ず仮設足場の設置が必要です。また現場管理費などの各種諸経費も必要です。
仮設足場設置「12万円~」
各種諸経費「3~5万円」
屋根の葺き替えと葺き直しの違いとは?
葺き替えと葺き直しの違い
屋根の葺き替えと葺き直しの違いは、既存の屋根材の処理方法の違いです。
葺き替えでは一般的に既存の屋根材は解体撤去され処分します。葺き直しでは既存の屋根材を再利用します。
既存の屋根材は経年劣化によって強度が低下していることもあるため、丁寧に解体を行う必要があります。
屋根葺き直しは和瓦だけ
既存の屋根材を再利用する葺き直しは基本的に和瓦の場合にだけ行われます。
和瓦の耐用年数は50~60年といわれていますが、瓦自体の耐久性は高くても屋根を構成する野地板などの下地材やルーフィングの耐用年数はそこまで長くありません。
そのため、下地材などの劣化時期に合わせて屋根の葺き直しを行うことが必要なのです。
屋根葺き直しのメリットとデメリット
屋根の葺き直しには、葺き替えと比べてメリット・デメリットが存在しますので、どちらも理解した上で施工方法の選定が必要となります。ここでは屋根葺き直しのメリットとデメリットを解説していきます。
メリット
費用を抑えられる
屋根葺き直しのメリットは、屋根葺き替えに比べて費用を抑えることができる点です。既存の屋根材を再利用するため新しい屋根材を用意する必要がありません。
建物全体のバランスを保てる
葺き直し工事の前後で外観に違いがないため、建物全体のバランスを保つことができます。瓦屋根の場合には、ほかの屋根材(洋風調)に変更することで建物のデザインや格式が下がってしまうこともあるので注意が必要です。
デメリット
工期が長くなる場合がある
屋根葺き直しのデメリットは、工期が長くなりやすいことです。既存の屋根材を再利用するため解体や撤去の際に慎重に作業を進める必要がありますし、瓦材も重いため作業に日数を要します。
同じ瓦が無い場合がある
葺き直しを行う瓦屋根の種類によっては、現在ではあまり使われない瓦もあります。その屋根材に在庫が無い場合は、割れてしまった際に同じ瓦材で仕上げることが出来なくなります。
同等品を使用した場合、多少色合いや素材感が変わる可能性があり、美観に影響することもあります。
瓦屋根は重量がある
葺き直しが可能な瓦屋根の重量はほかの屋根材に比べて重いことが一般的です。一般的な粘土瓦は「約60kg/㎡」あり、スレート屋根材の3倍も重たい屋根材です。
屋根の下地だけ改善されても建物自体への重量による影響が残ります。
屋根葺き直し工事の費用を抑えるには?
屋根葺き直し工事は葺き替え工事に比べて費用を抑えることができますが、工事費用としては高額です。ここでは屋根葺き直し工事の費用を抑える方法を紹介していきます。
火災保険の確認
台風などの災害で屋根瓦のずれが発生している場合には、火災保険を利用して費用を抑えられる可能性があります。加入している火災保険の内容を確認することが大事です。
ただし、火災保険を利用する場合には補修が必要な状況の写真撮影や工事前に申請を行う必要があります。業者によっては火災保険の申請などに慣れた業者もいるので事前に確認しておきましょう。
助成金や補助金の活用
国や自治体によっては助成金や補助金が設定されている場合があります。
ただし、助成金や補助金が設定されている工事は耐震や省エネなどと関連したリフォームが対象となっていることが多いです。屋根葺き直し工事が助成金や補助金の対象となるかどうかは、その年によっても変わることもあるため、自治体に確認したほうが良いでしょう。
最後に
屋根葺き直し工事は、葺き替え工事と比べてコストを抑えて屋根のメンテナンスが行える屋根リフォームです。
既存の瓦の処分費、新しい屋根材の商品代、搬送費がかからないため、費用が抑えられます。
ですが、建物は老朽化するため本来であれば躯体の劣化に備えて軽量屋根材へのリフォームが求められます。重たい屋根よりも軽い屋根の方が耐震性向上につながるためです。
葺き直しは建物が老朽化しても重たい屋根はそのままになってしまう点は、それなりのデメリットとなってしまいます。
工事費用だけではなく、メリット、デメリットを踏まえて屋根リフォーム方法を選定することがとても大事となります。